2007 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋のインスリンシグナルに及ぼす視床下部-交感神経系の調節機構とその分子機構
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19790653
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
志内 哲也 National Institute for Physiological Sciences, 発達生理学研究系, 助教 (70372729)
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Keywords | オレキシン / 交感神経系 / 骨格筋 / 視床下部 / 糖代謝 / シグナル伝達 / βアドレナリン受容体 |
Research Abstract |
低容量のオレキシンA(5pmol)を視床下部腹内側核(VMH)に投与すると、交感神経系の活性化を伴って、骨格筋において顕著にグルコースの取り込みが上昇し、同時に、骨格筋では、PI-3K活性、AktおよびAS160のリン酸化が増強していた。しかし、インスリン受容体のリン酸化に変化は無かった。また、血糖値、血漿インスリン濃度、血漿エピネフリン濃度、摂食量および運動量に変化は無かった。オレキシンによるグルコース取り込み促進作用は、アドレナリンβ受容体ノックアウトマウスでは起こらなかったが、electropolation法によりβ2受容体を骨格筋に発現させると、オレキシンの作用が回復した。さらに、マウス脳スライス標本を用いて電気生理学的な検討を行ったところ、オレキシンは多くのVMHニューロンを興奮させることが分かった。 一方、マウスに自発的にサッカリン溶液を摂取させると、インスリンによる骨格筋でのグルコース取り込み作用が増強した。また、サッカリンによるグルコースの取り込み促進作用は、オレキシン受容体拮抗薬をVMHに投与、あるいはβ2アドレナリン受容体拮抗薬の全身投与により低下した。さらに、サッカリンの摂取によりオレキシン・ニューロンにおいてc-Fosの発現が有意に増加した。 本研究により、甘味刺激は、視床下部オレキシン・ニューロンを活性化し、VMH-交感神経-β2アドレナリン受容体経路を介して骨格筋でのグルコースの取り込みを促進することが明らかとなった。またその作用は、PI3K、Akt、AS160のシグナル分子を介する可能性が高い。
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