2019 Fiscal Year Annual Research Report
放射光X線CTによる非破壊での日本刀の体系的研究:作刀技術解明にむけて
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19H01358
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
田中 眞奈子 昭和女子大学, 人間文化学部, 准教授 (70616375)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 一敏 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 教授 (20141989)
星野 真人 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 主幹研究員 (30508461)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本刀 / 放射光 / 非破壊分析 / X線CT |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、研究代表者らがこれまで確立してきた放射光X線を用いた鉄鋼文化財の非破壊分析技術を日本刀の作刀技法の解明のために応用し、刀剣の専門家や博物館、放射光分析の専門家他と学際的な研究グループを組織し、作者や流派、時代に焦点を絞り5年間で120振を超える価値ある日本刀を体系的に分析することで最終的に日本刀の黄金時代と言われる鎌倉中期の作刀技術を解明することを目的としている。 2019年度は「研究実施計画」に沿って、地肌や作刀技術に特徴のある日本刀等に焦点を絞り研究を進め、以下の意義ある成果を得た。 (1) 八雲鍛えと言われる地肌が特徴の徳川斉昭公作日本刀(徳川ミュージアム所蔵)をはじめ幕末の水戸刀名品など28振の調査を行った。また、滋賀県甲賀市の藤栄神社所蔵で、ヨーロッパの西洋式長剣が国内で唯一伝世した作例と考えらえる十字形洋剣の調査も実施した。大型放射光施設SPring-8BL28B2 の200keVの高エネルギーX線CTにより、各刀剣内部の特徴的な非金属介在物の配列を明瞭に観察することが出来た。十字形洋剣は折り返し鍛錬の形跡がみられ日本で制作された可能性が高く、洋剣の由来につながる非常に大きな成果を得た。 (2)SPring-8BL28B2で日本刀をより安全に早く測定するための高精細X線マイクロCTの開発も行った。投影ライブ画像を見ながらリモートで試料の位置微調整が可能な調整機構を開発・導入することで、試料関心領域の位置合わせに要する時間や労力を大幅に低減することができ、より効率的な計測が可能となった。 (3)研究成果は、国内外で計11件の発表(うち6件が招待講演、2件が国際会議、2件が海外の美術館での講演)、計1冊の出版により積極的に公表した。十字形洋剣に関する本成果は2019年11月6日のNHKニュースウオッチ9で紹介され、NHKホームページのウェブ特集にも掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、5年間で120振を超える日本刀を放射光X線CT分析により非破壊で体系的に分析することを目的としているが、1年目の2019年度には大型放射光施設SPring-8のA期(前期)とB期(後期)のいずれも無事課題採択され、計4回の実験を通して計28振の日本刀を分析することが出来た(2019A1519「放射光X線CTを用いた非破壊分析による幕末水戸刀ならびに藤栄神社所蔵の十字形洋剣の研究:作刀技術解明にむけて」、2019B1543「平安期日本刀の作刀技術解明にむけた放射光X線CT測定」)。非破壊での体系的な日本刀の分析は非常に先進的な取り組みであり、計画当初は分析手法(高精細X線マイクロCT計測)の更なる改善や、分析対象である貴重な日本刀の貸し出しや固定方法などを若干懸念していたが、研究分担者(星野、原田)の協力・貢献によりいずれも解決・改善し、当初の計画以上に研究を進展することが出来た。得られた成果も、初年度から国内外の学会や書籍などで積極的に発表し、メディアで取り上げられるなどの反響も得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度も、当初の「研究実施計画」に基づき以下の通り研究を推進していく予定である。 (1)兼吉作日本刀(個人蔵)や兼延作日本刀(個人蔵)など室町時代の美濃伝を中心に、室町時代以降に制作された日本刀24振の放射光X線CT測定を行う。2019年度に実施した地肌や作刀技術に特徴のある日本刀等の調査結果も踏まえ、新刀、新新刀ならびに現代刀も多く測定したい。鉄原料の性質の違いが日本刀の地肌にどのように影響を与えているか確認・検証も行う予定である。既にSPring-8の2020年度A期(前期)の実験課題(課題番号2020A1507)も採択されており、前期に2回の実験を行う予定である。ただし今後の実験の遂行にあたり新型コロナウイルスの影響が強く懸念される(1回目の実験は既に後期への延期が決定)。 (2) X線CT計測手法の改良に引き続き取り組むとともに、研究分担者・研究協力者をはじめとする各分野の専門家達と、得られた結果の多角的な検証・考察を行う。 (3)研究成果は国内外の学会、論文誌等で引き続き積極的に公表していく。
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Research Products
(12 results)
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[Book] 名刀大全2020
Author(s)
渡邉妙子, 原田 一敏
Total Pages
354
Publisher
小学館
ISBN
9784096823040