2020 Fiscal Year Research-status Report
日中、アジア・太平洋戦争とその連続性から見た火野葦平文学研究
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19K00309
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
増田 周子 関西大学, 文学部, 教授 (30294664)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アジア太平洋戦争 / 天皇 / 占領軍 / 火野葦平 / 新中国 / 大東亜共栄圏構想 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年は、1955年の「アジア諸国会議」後、火野葦平ら28名で参加した新中国の視察について研究した。すなわち、4月25日、26日の漢口、武漢の視察状況について調査し、論考をまとめることができた。さらに、1945年8月26日、終戦から1か月もたたないうちに、火野の母の郷里の広島県比婆郡の山峡に入り、敗戦の無念さ、占領されていく日本の未来への危惧などを綴り、その絶望感から自殺さえも決意していたという独白の未公開手記『山峡独語』を翻刻、紹介し、解説などを加えて発表した。『山峡独語』は、日本の大東亜共栄圏構想を、植民地からアジア諸国を救うよい政策だと信じ、お国のために人生を捧げてきた自らのことや、亡くなった兵士や銃後の人々を振り返って綴った赤裸々な火野の独白である。すべてが敗戦とともに無となり、虚しさが伝わる内容であった。占領軍に占領されていく不安さも克明に記されていて興味深い。火野は、戦時中から、戦争を手放しで称賛していたわけでもないが、軍国主義に翻弄されて生きるしかなかった。戦後は、火野の考えは、はっきりと戦争批判、平和主義へと変化していくが、『山峡独語』は、敗戦直後の火野の落胆の様子や、日本、天皇を思う気持ちがわかる貴重な資料と言える。なお本資料は北九州文学館所蔵である。 また、2020年は、火野葦平没後六十年にあたり、北九州文学館にて、火野葦平展が開催された。その開催にともない、同館で招待講座による講演を行った。何度も北九州文学館を訪れ、館長今川英子氏、他学芸員の皆様方と研究相談をし、若松区の火野葦平資料館も訪れ、坂口博氏とも研究交流を行うことができた。また、福岡市総合図書館で、火野葦平の友人関係や火野の九州時代の活動について調査を行った。新型コロナウイルス感染拡大のため、研究計画を海外ではなく日本中心に変更せねばならなかったが、成果はあげることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大状況下で、海外調査などが実行できず、大幅に日本中心の研究に変更せねばならなくなった。しかし、九州時代の火野葦平の調査などは着実に進めることができた。また、学会開催なども危ぶまれる中でも、論文数点をまとめるなど、成果をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も新型コロナウイルスの感染拡大のため海外調査は断念せざるを得ない状況である。しかし、5月には東アジア文交渉学会、同10月には山東フォーラムなどの国際学会への参加が決定している。いずれの学会も火野葦平の戦後の活動について口頭発表を行うつもりで準備中である。さらに、2022年3月には関西大学で、関西大学東西学術研究所日本言語文化班と、本科研費との共同開催による国際シンポジウムを開催する予定であり、現在準備を進めている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大のため、山東フォーラムが2020年10月に開催される予定であったが延期されてしまった。また、海外の現地調査などをする予定であったが、すべて実施することができなくなってしまったため、旅費などが使えなくなってしまった。 2021年度には、関西大学で、関西大学東西学術研究所日本言語文化班と、本科研費との共同開催による国際シンポジウムを開催する予定であり、現在準備を進めている。その国際シンポジウムのゲスト講演者への謝金、予稿集の印刷費、発送費、ポスター等の作成費、アルバイト代などに使用する予定である。また、日本国内での調査費などに使用する予定である。
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Research Products
(3 results)