2019 Fiscal Year Research-status Report
脱冷戦期日韓・日朝関係における歴史和解プロセスの国際政治学的分析
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19K13630
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Research Institution | Fukuyama City University |
Principal Investigator |
松浦 正伸 福山市立大学, 都市経営学部, 講師 (90736042)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 歴史和解 / 歴史認識 / 日韓関係 / 日朝関係 / 日韓共同宣言 / パワー / 太陽政策 / 日朝平壌宣言 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、現在進行中の日韓共同研究を土台にしながら、戦争責任、植民地、人権という3つの概念を整理・分類し、朝鮮半島と日本の歴史認識問題に関する理解を深めた。一口に、歴史認識問題といっても、そこには様々な概念が内包される。戦争責任には、サンフランシスコ講和体制、すなわち、戦勝国と敗戦国間での歴史認識が関係している。その一方で、戦後の日本と朝鮮半島との関係は、帝国と植民地の歴史認識によって規定されてきた。つまり、日韓・日朝間の政府交渉は、国際法の枠組みから、主に、前者によって規定されてきたといえる。とはいえ、ある種の「建国神話」から、自らを「戦勝国」とアイデンティファイする韓国と北朝鮮にとって、後者のアプローチには、常に不満が内包されるものであった。こうした不満は、韓国では米国を中心とする戦略体系に組み込まれることで制御された一方、北朝鮮では、対日外交そのものが主要なイシューとして浮上してこなかった。ところが、冷戦構造の崩壊により、転機が訪れた。韓国では民主化・フェミニズム運動がこうした「不満」と合流した。北朝鮮では中韓・韓露の国交正常化による国際環境の孤立化と、9.11テロを背景とした対米脅威認識が高まった。さらに日本は、韓国の対北政策が「太陽政策」へと転換したことを受けて、対朝鮮半島外交の政策空間が拡張した。こうした朝鮮半島の戦略環境の変化により、日本と2つのコリアには、歴史和解をめぐる縫合の余地が生じた。その結果、日韓共同宣言、日朝平壌宣言が発出されるに至った。以上のような分析結果を受けて、東アジアにおける歴史推進の条件に、パワーと利益の体系がどのように作用したのか見通しを得ることができた。次年度は、これらの成果の一部を韓国で出版する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今般の「コロナ禍」を受けて、2020年初頭に予定していた韓国現地調査をすべてキャンセルせざるを得なかった。また、当初予定していた学会発表をキャンセルせざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
戦争責任、植民地、人権という3つの概念的な区分けにより、ひとまず、日本と朝鮮半島の歴史認識問題の特性について、時代ごとの見取り図を得ることができた。このため、今後の研究では、和解の推進要因に関する制度面での分析を進めたい。具体的には、欧州の二ヶ国間の教科書委員会、歴史研究所について分析する予定である。想定されるのは、1950年代初頭の「ヨーロッパ史で対立のある問題をめぐる独仏協定」、1972年「ドイツ・ポーランド教科書委員会」、1980年代のドイツ・イスラエルの専門家による制度化、2002年ドイツ・チェコ教科書委員会、パリとワルシャワのドイツ史研究所の役割である。欧州と東北アジアの制度化に関する比較を通じて、歴史和解の推進に与える制度の役割について解明したい。
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Causes of Carryover |
論文の国際学会での発表に向けた準備の一環として、ネイティブチェックをうける必要性が生じた。また、当初、研究プロジェクトの後半に予定していた研究用ホームページの開設を前倒し、研究の進捗状況を内外に発信するためのプラットフォームを構築した。これにより、次年度分の使用額が発生した。なお、以上のような研究計画に従って、次年度繰り越し分を適切に使用する。
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