2023 Fiscal Year Research-status Report
脱冷戦期日韓・日朝関係における歴史和解プロセスの国際政治学的分析
Project/Area Number |
19K13630
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Research Institution | Fukuyama City University |
Principal Investigator |
松浦 正伸 福山市立大学, 都市経営学部, 准教授 (90736042)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大韓民国 / 朝鮮民主主義人民共和国 / 歴史認識問題 / 東アジア / スマートパワー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のテーマは「脱冷戦期日韓・日朝関係における歴史和解プロセスの国際政治学的分析」である。東アジアの歴史和解をめぐる研究は、これまで歴史学、社会学に分析レベルが集中し、国際政治学的なアプローチによる分析が等閑視されてきた。本研究では、国際政治学者のジョゼフ・ナイ(Joseph Samuel Nye Jr.)が提唱する「スマート・パワー」理論を援用し、日本と「2つのコリア」との間で植民地をめぐる歴史和解に向けた共通の動きが顕在化することとなった2000年前後の「2つの共同宣言」の合意形成過程を分析した。「日韓共同宣言」については、植民地支配をめぐり初めて公式文書で反省・謝罪を記し、その後の2か国間関係を強化する土台となり、「日朝平壌宣言」は1995年の「村山談話」の立場を継承しながら植民地支配に対する「お詫び」を表明し、北朝鮮がそれを受け入れ日朝国交正常化への道筋をつけるものであった。「2つの共同宣言」は、日本と朝鮮半島の間で、不幸な過去の清算と諸懸案の解決を確認するためのものであり、歴史和解をめぐる重要な転換点であったが、合意に至るプロセスは決して容易なものではなかった。本研究では、歴史認識問題において重要な外交的役割を果たしてきたVoluntary Agency Network of Korea(VANK)の活動を中心に、歴史認識問題に関するサイバー空間における非政府アクターの役割について解明した。また、日韓関係については、保守政権の対日外交における歴史認識問題の外交政策を中心に分析し、歴史認識問題と安全保障政策や軍事戦略との関係性について現地の一次資料をもとに考察する研究を発表した。「2つの共同宣言」をめぐる3ヵ国の国際関係を検証すると、リアリズムが重視するハード・パワーは勿論、外交政策における課題設定・説得・魅力等によって他国を引きつける「吸引型行動」も確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、延世大学校金大中図書館における国際共同シンポジウムにおいて、諸般の政治学理論を援用しながら、北朝鮮経済について市場、経済改革、日朝交渉をテーマについてシンポジウムにて発表した。また、韓国での現地調査を実施し金大中元大統領の演説集等の一次文献資料を収集するとともに、国内においては北朝鮮の朝鮮労働党の機関紙『労働新聞』を収集した。
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Strategy for Future Research Activity |
歴史和解と現実政治に作用する要因を析出するためには、和解合意プロセスのどの段階において国家(政府)が歴史和解に向けた謝罪を受け入れるのか。あるいは国家が謝罪が十分であると判断するのか解明する必要がある。過年度までに実証分析を一定程度行ってきたことを踏まえて、今後の研究では、日本と2つのコリアにおける歴史和解の中範囲理論の構築に向けた研究を推進する。
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Causes of Carryover |
他の国際共同研究プロジェクト等の進捗により、本研究プロジェクトの調査が予想よりも遅れたため、研究費に未使用額が生じた。このため、海外現地調査で予定される書籍やデータ収集について次年度に対応する計画である。
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