2020 Fiscal Year Research-status Report
IGF-1&EPAによる腸管不全の肝障害・腸管順応Dual Therapyの開発
Project/Area Number |
19K18032
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
武藤 充 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (70404522)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 新生児 / 腸管不全 / 短腸症候群 / 胆汁うっ滞 / 肝障害 / ω3系脂肪酸 / 腸管順応 / 成長ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新生児・乳児期の腸管不全患児において、長期静脈栄養管理時に経験する難治性の胆汁うっ滞性肝障害の進行、静脈栄養関連肝障害(Parenteral nutrition-associated liver disease: PNALD)の制御および残存腸管順応を同時に誘導することを目的としている。エイコサペンタ塩酸(EPA)とinsulin-like growth factor-1(IGF-1)の両者を用いて新規治療法を開発することをめざしている。魚油由来の脂肪乳剤の中のEPAが持つ抗炎症作用は、生理的代謝負荷を越えた場合に障害される肝細胞に対し、その回復作用を支持することで有用性が期待されている。また、胆汁うっ滞軽減作用も大きな効果である。我々は、実際に魚油脂肪乳剤を用いた結果、高度の胆汁うっ滞性肝障害が軽快した症例を複数経験している。しかし、製剤自体の易酸化変化も考慮しなければならない。小児に実際に使用する少量ずつの管理では工夫を要するため、その安定供給方法を特定する必要がある。密閉・酸素吸着剤の同封・遮光の処理を加えることによって、製剤自体の酸化防止を担保する方法を確立しつつある。一方、今回着目しているIGF-1は、組織修復に関連するホルモンとして、腸管粘膜増成作用を有することに加えて、肝疾患に対する有効性の報告も散見されるようになった。世界的に臨床治験が行われている腸管修復促進ホルモンGLP-2の上位ホルモンにあたる。この有用性について短腸静脈栄養モデルでの検証をする必要があると考え、小動物モデルから研究をすすめている。若齢ラットの腸管を切除し、短小腸状況をつくり、経静脈からカニュレーションして静脈栄養を行い管理をしている。モデルの安定性が得られてきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における重要な項目について確認作業を行っているため。 現在、EPAを含む特殊脂肪乳剤は、本邦では入手と使用が限られている。このため、特殊脂肪乳剤製剤の有効保存法について検証をすすめている。最も大きな問題点が、魚油脂肪乳剤自体の易酸化による劣化にある。脂肪乳剤を分注して保存する際、酸化防止処置を施すことによって、一定期間劣化が抑制可能なことを確認している。 また、幼若ラットを用いた短小腸静脈栄養管理モデルの安定化に取り組んでいる。静脈栄養管理モデルは既に安定性が保たれ開発済であるが、消化管吸収面積の減少に関わる全身へのストレスが加わった状態の短小腸静脈栄養管理モデルの安定化をはからねばならならず、目下取り組んでいる。実験動物の生存率は向上しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
対象製剤の安定保存方法の確立、幼若ラット短小腸静脈栄養管理モデルの安定化を図った後、EPAおよびIGF-1による肝細胞への酸化ストレス軽減効果をモデルで検証する。小型動物での検証体制が確立できた後、大型動物での検証体制づくりに移行する。ヒト新生児と解剖学的相同性、代謝生理学的類似性の最も高い新生仔ブタを用いる。鹿児島大学では、医用ミニブタを用いた研究施設があるため、新生仔ブタの飼育体制構築に応用を考えている。新生仔ブタの完全静脈栄養管理(TPN)下の飼育を行うことが、第一段階の目標となる。研究代表者の海外での実験経験から、2~3週間のTPN管理において、血液生化学検査でビリルビンおよび総胆汁酸の上昇をみとめることが分かっており、総胆管カニュレーションによって実際の胆汁流出量の低下が確認でき、17日間の観察で組織学的には胆汁うっ滞性肝障害を生じることは既に解明している。さらに、小腸切除による短腸モデルの長期飼育と実験応用を図りたい。ω3系脂肪乳剤は現在国内では未認可な製剤である。このため、治療適用する際には適時輸入がもとめられる貴重な製剤となっている。小児に一度に適用する量は、特に体の小さな新生児においては少量に限られており、製剤の劣化とくに開封後急速に進行すると言われる製剤そのものの酸化を抑制する保存方法の開発も同時に求められる。この点についても、種々の検討を重ね、有効管理方法を特定して行く方針である。
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Causes of Carryover |
製剤安定保存方法の工夫と実証、モデル動物の安定性に取り組む必要性があり、実験計画の遂行に次年度使用を要している。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] 【腸管リハビリテーションUpdate】腸管順応促進ホルモン-ペプチド成長因子を用いた短腸症候群の治療について2020
Author(s)
武藤 充, 加治 建, 矢野 圭輔, 大西 峻, 山田 和歌, Lim DW, 長野 綾香, 松井 まゆ, 松久保 眞, Turner JM, Wales PW, 家入 里志
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Journal Title
外科と代謝・栄養
Volume: 54(6)
Pages: 229~233
DOI
Open Access
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[Presentation] 短腸症候群の予後を拓くために必要なこととは―基礎・臨床研究から2020
Author(s)
武藤 充, 永井 太一朗, 大西 峻, 春松 敏夫, 山田 耕嗣, 山田 和歌, 松久保 眞, 町頭 成郎, 中目 和彦, 向井 基, 加治 建, 家入 里志
Organizer
第120回日本外科学会定期学術集会