2023 Fiscal Year Annual Research Report
Empirical Political Science Research on the Issue of Compatibility and Contradiction between Science and Indigenous Knowledge in the Arctic Island of Greenland
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19K20514
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
高橋 美野梨 北海学園大学, 法学部, 准教授 (90722900)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会統合政策 / 歴史的身体 / 和解 / グリーンランド / デンマーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、クジラ等の生物資源を事例に、グリーンランド・イヌイット社会における科学知と在来知の調和と背反を理解することを目指すものである。いかに目指したか。本課題の軸となったのは、グリーンランドがデンマーク(=ノルウェー同君連合)の体系的な社会統合政策に組み込まれていく18世紀以降の科学知と在来知の結節の局面だった。デンマークの統合政策の対象になったことが、グリーンランドの身体性にいかなる影響を与えたか、在来の世界観が(近代)科学と出合うことでいかなる変容をとげたのかを見定めていくことが目的となった。
本課題の全体像に即しつつ最終年度に実施した研究の成果をまとめると、以下のように整理できる。すなわち、グリーンランドとデンマークの結節の局面は、時代の変化に呼応する形で、3つの局面に分けられるというものである。第一は、上位=デンマークと下位=グリーンランドの関係に即しながら、グリーンランドが有する豊富な自然資源を安定的且つ継続的に利活用するために、在来知を温存することが目指された時代(1721~1953)。第二は、第二次世界大戦を契機として、米国に代表される上位アクターのデンマーク国家への介入が進んだことで、上位から中位に転位したデンマークによる集中的且つ画一的な近代化(科学知への転換)政策が推し進められた時代(1953~1986)。第三は、グローバルな先住民の権利再生運動に呼応する形で、在来知/科学知という二値的な知の関係の相対化を目指すべく、実質的な「和解」の在り方が問われた(ている)時代(1986~)。通底するのは、グリーンランドを排除することよりも搾取に力点を置くデンマークの政策論理である。
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