2019 Fiscal Year Research-status Report
歴史事象の超長期的影響に関する研究-戊辰戦争と現代日本政治経済-
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19K21681
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
窪田 悠一 新潟県立大学, 国際地域学部, 准教授 (40710075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 勝孝 福岡大学, 経済学部, 准教授 (30738810)
伊藤 岳 広島大学, 国際協力研究科, 助教 (80773895)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 戊辰戦争 / 内戦 / 地理情報データ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、歴史事象の現代社会における影響を考察の対象とし、これまで不可能であるかのように扱われてきた超長期的因果関係の分析に基づく新たな実証的社会科学研究を提唱することを目的とする。特にここでは、過去の政治暴力が現代社会にどのような影響を及ぼしているのかという点に焦点を当てる。実際には、戊辰戦争における戦闘や暴力の遺産が現代日本政治経済に与える影響について地理情報データを収集しながら考察する。この目的のために本研究では、a) 戊辰戦争における戦闘・暴力の発生メカニズムの解明、b) そうした政治暴力が現代市民の政治意識・行動、また経済活動に与える影響を分析する。
当該年度は、戊辰戦争の戦闘・暴力に関する地理情報を含むデータセットの構築を行った。データセットでは戦闘や暴力等の各イベントに関して、詳細な日時や場所についての情報を記録し、新政府軍と旧幕府勢力・奥羽越列藩同盟との間の戦闘や市民に対する暴力がなぜ起きたのかについて、政治・社会勢力の分布、地形や街道・港湾の分布などの地理情報データをもとにした統計分析を行うための準備を行った。作業に当たっては、戊辰戦争における全ての戦況経過を詳細に記録した基礎的文献である、大山柏『戊辰役戦史』(時事通信社、1988年)を主に参照した。この結果、軍事組織間の戦闘だけでなく、それらの村落に対する暴力など2,000件を超えるイベントを記録するに至った。現在、本データセットは分析に向けてさらなる整備を行っているが、関連する後続研究にも新たな研究資源を提供することができると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、戊辰戦争における戦闘などの暴力に関するイベントデータの収集が完了したため。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の研究実績を踏まえて、今後は1)当該年度に構築したデータセットの分析、2)さらなる関連データの収集を行う。前者については、戊辰戦争における新政府軍と旧幕府勢力・奥羽越列藩同盟との間の戦闘や市民に対する暴力がなぜ起きたのかについて、政治・社会勢力の分布、地形や街道・港湾の分布などの地理情報データをもとにした統計分析を行う。後者については、現在の日本における道路網、人口密度、夜間光放出量といったデータを収集し、戊辰戦争における戦闘・暴力イベントとのマッチングを図る。両者ともに成果を論文としてまとめ、学術雑誌での刊行を目指す。
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Causes of Carryover |
データ収集作業が当初予定よりも円滑に進んだことで、人件費・謝金が抑えられたため、次年度使用額が生じた。これらは江戸・幕末期における地理情報データや現代日本の経済活動に関するデータの収集や、論文の執筆・発表にかかる諸費用に充てる。
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