2021 Fiscal Year Research-status Report
女性医療職者におけるキャリア継続の10年の変遷を追う
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19K21724
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Research Institution | Fukuoka Nursing College |
Principal Investigator |
樗木 晶子 福岡看護大学, 看護学部, 教授 (60216497)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
錦谷 まりこ 九州大学, 持続可能な社会のための決断科学センター, 准教授 (40327333)
城戸 瑞穂 佐賀大学, 医学部, 教授 (60253457)
中島 直樹 九州大学, 大学病院, 教授 (60325529)
守屋 普久子 久留米大学, 医学部, 講師 (80449917)
武冨 貴久子 札幌市立大学, 看護学部, 講師 (80543412)
伊豆倉 理江子 九州大学, 医学研究院, 学術研究員 (80805292)
藤野 ユリ子 福岡女学院看護大学, 看護学部, 教授 (90320366)
永吉 絹子 九州大学, 大学病院, 助教 (90761015)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | 女性医療職者 / キャリア継続 / 労働衛生的視点 / 高度専門職 / 縦断調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国では、労働衛生的視点から医療現場で働く医師・看護師などの高度専門職者の健康や職場環境に関する検討は少ない。研究代表者は2007年度文部科学省大学改革等推進事業「社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラム」に採択され女性医療人支援を開始した。その際に九州大学、福岡大学、佐賀大学において医療人の生きがいや健康意識を調査し報告した。その後、久留米大学病院「元気プロジェクト」、佐賀大学医学部「バルーンプロジェクト」も開始され、女性医師支援の機運が高まってきた。本研究では、現状を調査するとともにこのように女性医師支援が開始されてから10年余を経て、これらの取組みによって医療現場がどのように変化してきたか縦断的検討も行う。 本研究では九州大学、福岡大学、佐賀大学、久留米大学、産業医科大学に勤務する男女の医師・歯科医師、その他の医療職(看護師,薬剤師, 検査技師,理学療法士等)を悉皆的に調査対象とした。調査項目としては基本項目(職種,専門,教育歴,勤続,年齢,性別,婚姻・世帯状況,雇用形態等),職場環境の情報(勤務時間,職業性ストレス簡易調査票),健康情報(精神健康調査General Health Questionnaire: GHQ,主観的健康,生活習慣)についてアンケート調査を行う。データ収集方法は紙媒体及びオンライン・データ集積管理システム(Research Electronic Data Capture: REDCap)の両方を用いて実施する。収集されたデータは研究代表者の所属施設(福岡看護大学樗木研究室)において厳重に管理する。多施設共同研究であり、各施設の倫理委員会の承認を経て,2019年度中にアンケート調査を施行し、2020年度にはこの 結果を用いてエビデンスに基づいた医療職のキャリア継続要因を明らかにし、広く公表すると共に論文化によって学術的にも価値のあるものとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究申請時の予定では2020年度末までにアンケート調査を完了し、アンケート結果をもとに啓発講演会など行う予定であったが、2019年12月末に発生した新型コロナウイルス感染症パンデミックのために2020年度末までにアンケート調査や啓発講演会を完了できなかった。そのため2021年度まで研究期間を延長し、この間に九州大学、佐賀大学、福岡大学、久留米大学、産業医科大学において最終調査を完了後、啓発講演会などの広報活動を予定していた。しかし、2021年度も予想以上に新型コロナウイルス感染拡大に多くの医療人が対応する状況であったため、各施設での調査や広報活動が可能な状況となるまで待たざるをえなくなった。また、学生も自宅学習やウエブ学習となり医療職者も日常の勤務体制と異なる在宅勤務などが継続し講演会などへの参加が見込めない状況が続いていた。現在までに、佐賀大学(997人)、九州大学(1016人)、福岡大学(204人)、久留米大学(494人)、産業医科大学 (447人) の回答を得ることができ、全体で約7000部の配布に対して約3100部が回収され約40%の回収率であった。粗集計結果とデータを各施設に報告したので各施設でも独自の解析ができる環境が整っている。延期した2021年度末までにデータのクリーニングや詳細な解析のための準備は整ったが、2010年に施行した文部科学省「社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラム」における調査と今回の結果の単純比較や、年齢、婚姻等の生活背景など交絡要因を調整して多変量解析を行い各種要因(労働時間、研修・待機等の拘束時間、業務上の圧力・業務量と範囲、仕事の報酬、周囲のサポート等)と労働衛生上のより良いアウトカム指標(勤務の継続期間、生活および職場由来のストレス、努力-報酬バランス、健康状態等)との関連を探索することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度終了を目指し、研究計画を詳細に検討して現在、遅れを取り戻すべく研究を推進している。具体的には、全く行えていない啓発講演会や本データをもとにした検討会を2022年度前半には、コロナ禍のなかで普及したウエブ会議システムを用いて行う予定である。テーマとしては3世代の女性医師、即ち、30年前、10年前にキャリアの継続に苦労していた現在60~70歳代、40~50歳代の女性医師と、現在、子育てとキャリアの両立を目指している30歳代の女性医師がどのような生き方をしているか対比させるパネルディスカッションを計画している。これにより、我が国の女性差別のあからさまな時代、女性医師支援の黎明期と女性医師支援が定着しつつある現在の状況を比較することにより今、何が必要かをより明らかにできると考えられる。 また、アンケート調査に関しては、データの解析をすすめ、性差、職種や施設、職種別に集計し、2010年に施行した文部科学省「社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラム」における調査と今回の結果の比較や、異性間、職種間、専門(診療科)間の職場環境、健康指標、生活状況の単純比較を行うことで問題点を明確化する予定である。さらに年齢、婚姻等の生活背景などの交絡要因を調整して多変量解析を行い各種要因(労働時間、研修・待機等の拘束時間、業務上の圧力・業務量と範囲、仕事の報酬、周囲のサポート等)と労働衛生上のより良いアウトカム指標(勤務の継続期間、生活および職場由来のストレス、努力-報酬バランス、健康状態等)との関連を探索する。組織や部署、職種といった複数の階層グループが存在するため、最終的にはマルチレベルモデルの多変量解析を行うことで医療者のキャリア継続に重要な要因を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
先述したように2021年度内に調査票の配布や回収、データの入力は行ったが、遅れているために詳細な解析はこれからとなる。また、新型コロナウイルス感染拡大防止による非常事態宣言のため、医療現場の特殊な状況をきたし、10年前の同等の調査との比較が困難となるため研究計画を変更せざるを得なかった。また、医療現場の緊迫状況はこのような調査への協力が難しい状況であった。また、予定されていた学会もweb開催が中止となり、旅費、参加費等予算執行もできなかった。また、啓発講演会などの開催費用も執行できず、当初の予定していた研究計画に必要とされた費用が残金となっており次年度使用が生じた。現在、調査が完了し、データの入力、クリーニング、粗集計が終了しているので、今後、詳細な解析を行い、学会発表、論文発表を行ってゆく為、予定どおりに統計ソフトの購入、会議費、国内、海外学会参加のための旅費や学会参加費、論文校正費、論文投稿費、報告書の作成や郵送費等として予算を執行できる見込みである。
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Research Products
(13 results)