2020 Fiscal Year Research-status Report
蛋白質の分子進化に関するエネルギー準位統計を用いたペプチドの網羅的解析
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19K21857
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山中 雅則 日本大学, 理工学部, 教授 (20307698)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 準位統計 / 密度汎関数法 / ランダム行列理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2種類のアミノ酸からなるジペプチドのエネルギー準位統計(近接エネルギー準位間隔と次近接エネルギー準位間隔とそれらの分布関数の推定)を数値的に解析を行った。まず、水媒質中のジペプチドの立体構造を分子動力学法を用いて多数のサンプリングを行った。次に、分子動力学法を用いて得られた立体構造について、密度汎関数法および非経験的第一原理法などの量子化学計算を適用してKohn-Sham軌道および分子軌道のエネルギー準位を数値的に計算した。得られたエネルギー準位を高次多項式でアンフォールディングを行い、平均エネルギー準位間隔からの揺らぎを数値的に求めた。それらを分子動力学法によってサンプリングした個々の立体構造全体について蓄積し、エネルギー準位間隔の分布関数を種々のフィッティング関数についてフィッティングすることで分布関数の推定を行った。大半のジペプチドにおいてもエネルギー準位間にいわゆる反発がみられ、ランダム行列理論における普遍統計曲線よりもポアソン統計側に変形した分布関数であるという知見が得られた。これらの分布関数はいわゆる臨界準位統計に類似していることが示唆された。アミノ酸単体の場合のエネルギー準位統計の分布関数と、ジペプチドとして組み合わせた場合の準位統計の分布関数が、組み合わせるアミノ酸について規則性があるかどうかについて知見を得た。また、分子量と密度汎関数法および非経験的第一原理法を用いた計算の計算時間について計算量の観点から考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ジペプチドは合計190種類あり、その全てを網羅的に同じ条件で数値計算を実行することが一部のジペプチドについては困難であることが判明した。例えば最も分子量の大きなジペプチドはジトリプトファンであるが、非経験的第一原理的手法の適用には計算時間の観点から困難がある。この部分の困難を回避するために密度汎関数法を用いるが、計算時間は基底関数の選択にも依存するために、いくつかの基底関数を試行した。また、それらと条件を合わせるために、より低分子のジペプチドについても再計算を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
高分子量であるために未計算のジペプチドについての計算を完了する。トリペプチドについては密度汎関数法を用いて計算を実行するが、基底関数の選択と計算時間のバランスについて最適化を行う。計算資源については新たに購入することで対応を行う。アミノ酸単体とジペプチドにおける組み合わせについて、何らかの規則性の見られる組み合わせについてトリペプチドの計算を優先して実行を行い、当初の研究計画の遂行を実行する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大のため、全ての学会がオンライン開催となり、研究成果の発表用の旅費を全く支出することができなかったため。加えて、最終年度も旅費は全く支出することができないことが見込まれるため、計算資源への使用を検討している。
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Research Products
(2 results)