2019 Fiscal Year Research-status Report
免荷によるがん進展、再発・転移加速化の分子メカニズムの解明とその治療への挑戦
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19K22719
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
日浅 雅博 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 講師 (90511337)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 廃用性萎縮 / がん / 免荷 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳がん、肺がんや多発性骨髄腫は、高頻度で骨転移と骨破壊病変がみられる難治性疾患である。これらのがんの骨破壊病変は骨痛や神経障害、骨折を生じ寝たきりを引き起こすが、寝たきりによる不動は廃用性筋萎縮や骨萎縮、易感染性の原因となり、がんの進展と生存率低下に関与する。故に、寝たきりを如何に防ぐか、寝たきりとなったとしてもがんの進展に直結しないための治療法や機能回復法が望まれる。本研究は、不動(寝たきり)による免荷が骨転移がんの進展・再発を加速化するメカニズムを、免荷による骨髄微小環境の変化と薬剤耐性休眠期がん細胞との関連を中心に解明し、治療法を確立することを目的とした。 本年度は、坐骨神経切除下肢麻痺モデルとギプス下肢固定による免荷モデルを作成し、免荷による筋肉、骨の細胞構成や機能変化を解析した。その後、5TGM-1マウス骨髄腫細胞、E0771マウス乳がん細胞を脛骨骨髄内にそれぞれ移植し、免荷によるがん進展が変化するかどうかを観察した。 坐骨神経切除下肢麻痺モデルとギプス下肢固定を行うと、骨と筋肉の廃用性萎縮がみられた。骨では骨形成に明らかな変化は見られなかったが、破骨細胞数の増加と骨吸収の亢進によって骨量は減少した。筋肉では、免荷によってmuscle specific E3 ubiquitin ligaseの遺伝子発現の上昇が観察され、筋重量の減少と筋繊維の直径の減少が見られた。さらに、坐骨神経切除下肢麻痺モデルに骨髄腫細胞と乳がん細胞を移植すると、shamモデルに比較し坐骨神経切除下肢麻痺モデルでは骨髄腫細胞や乳がん細胞の増殖促進を認めた。ギプス下肢固定モデルでも同様の検討を行い、免荷によるがん進展の加速化が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、これまでに坐骨神経切除下肢麻痺モデルとギプス下肢固定モデルを作成し骨と筋肉の萎縮とがん進展の関連について評価方法を確立した。結果、免荷によるがん進展加速化を確たる現象として証明した。現在、がん進展の加速化が免荷によって引き起こされるメカニズムに、がん細胞のdormancyが破骨細胞によって再活性化しているのではないかとの仮説を立て、検証を行っている。そのため、当初の予定通り実験計画を実施しており、おおむね順調に研究計画は進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
がん再発転移のメカニズムに、がん細胞のdormancyという休眠状態と再活性化が提唱されており、dormancyの仕組みには、がん細胞の再発元としてcancer stem cell(CSC)の関与が示唆されている。CSCは細胞分裂が遅く化学療法や放射線療法に対する治療抵抗性をもち、骨髄腫では抗癌剤の高い細胞外排出能をもつside population(SP)細胞としてFACS解析で画分される。近年、dormancyからの再活性化・転移に破骨細胞が関与することが明らかとなっており(Nat. Commun. 2015)、前述の下肢麻痺モデルで、がん細胞の肺転移の促進と破骨細胞数の増加を認めたことから、免荷がdormancyからの再活性化・転移の引き金となりうる可能性が考えられる。そこで、DiDで細胞膜染色した5TGM-1-GFP細胞とE0771-GFP細胞を骨髄内移植し、抗癌剤DNA、RNA合成阻害薬Doxorubicinの投与後に残存したdormant細胞が、その後の免荷によりどのような挙動を示すかを、二光子顕微鏡によるin vivoイメージングやFACS解析で追跡調査し、免荷がdormancyからの再活性化・転移の引き金になるか明らかにする。
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Causes of Carryover |
2019年度に、in vivoでの下肢麻痺モデルと下肢固定モデルによる免荷モデルの確立を行い、その免荷モデルを基にがん進展の解析、評価を行い指導学生とともに海外学会で発表する予定であったが、当初計画していたよりも、研究がスムーズに進行したおかげで物品費を安く抑えることができたことに加え、学会賞による旅費の補助等もあり未使用額が発生した。引き続き次年度以降も物品購入や動物飼育費等に使用する予定である。
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[Presentation] 不動性骨吸収の亢進は骨髄内の骨髄腫進展を促進させる2019
Author(s)
谷本 幸太朗, 日浅 雅博, 天眞 寛文, 寺町 順平, ASHTAR MOHANNAD, 岩佐 昌美, 小田 明日香, 曽我部 公子, 大浦 雅博, 原田 武志, 中村 信元, 三木 浩和, 遠藤 逸朗, 田中 栄二, 松本 俊夫, 安倍 正博
Organizer
第37回日本骨代謝学会学術集会
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[Presentation] Mechanical unloading accelerates myeloma tumor expansion.2019
Author(s)
Kotaro Tanimoto, Masahiro Hiasa, Hirohumi Tenshin, Junpei Teramachi, Mohannad Ashtar, Ariunzaya Baterdene, Masami Iwasa, Kimiko Sogabe, Masahiro Oura, Takeshi Harada, Shingen Nakamura, Kazuhiro Miki, Itsuro Endo, Eiji Tanaka, Toshio Matsumoto, Masahiro Abe
Organizer
29th ANZBMS Annual Scientific Meeting
Int'l Joint Research
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[Presentation] Immobilization promotes bone resorption and tumor expansion in myeloma2019
Author(s)
Kotaro Tanimoto, Masahiro Hiasa, Hirohumi Tenshin, Junpei Teramachi, Mohannad Ashtar, Asuka Oda, Masami Iwasa, Kimiko Sogabe, Masahiro Oura, Takeshi Harada, Shingen Nakamura, Kazuhiro Miki, Itsuro Endo, Eiji Tanaka, Toshio Matsumoto, Masahiro Abe
Organizer
第81回日本血液学会学術集会
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[Presentation] 不動は骨吸収と骨髄腫進展を促進させる2019
Author(s)
谷本 幸太朗, 日浅 雅博, 天眞 寛文, 寺町 順平, ASHTAR MOHANNAD, 岩佐 昌美, 小田 明日香, 曽我部 公子, 大浦 雅博, 原田 武志, 中村 信元, 三木 浩和, 遠藤 逸朗, 田中 栄二, 松本 俊夫, 安倍 正博
Organizer
第44回日本骨髄腫学会学術集会