2021 Fiscal Year Annual Research Report
19-20世紀転換期における英米文学と宗教・スピリチュアリズムとの交流
Project/Area Number |
19K23037
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
宮澤 優樹 金沢大学, 歴史言語文化学系, 講師 (00846800)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 文学と宗教 / スピリチュアリズム / 英米文学 / 世紀末文化 / ヘンリー・ジェイムズ / イーディス・ウォートン |
Outline of Annual Research Achievements |
イーディス・ウォートンの『イーサン・フロム』における宗教性を詳らかに検討することができた。本作品は米国ニューイングランドの農村における貧困層の暮らしを描いたもので、同時代の思想や宗教的動向のような、知的階級の関心に属する事柄とは表面上の距離がある。しかし、主人公の苦しい生活を宗教的な苦難と読み換えたとき、事情は異なってくる。本研究においては、主人公をそのような宗教的側面を持つ人物とみなしたうえで、作品における題材をその観点から逐一検討し直すことを目指した。このとき、重要な題材のひとつとして、絵画が浮かび上がった。前年度の報告書に記載の通り、文学作品における視覚的な要素は本研究における重要な検討課題である。今後は同様の観点からウォートンの他の作品をも吟味する予定である。そのとき、『イーサン・フロム』と同様にニューイングランドを舞台とする物語群(長編小説『夏』やいくつかの中短編小説)が中心的な考察の対象となるだろう。またヘンリー・ジェイムズについて、視覚表象という観点から考察したとき、宗教やスピリチュアリズムを表面的な題材としない作品、すなわち初期の芸術作品を題材とした作品等を同様の観点から考察することのできる可能性を見出した。その意味で、初期の長編小説のうちのいくつか、あるいはジェイムズの数ある作品のなかでもとりわけ代表作とみなされているいくつかの短編小説が、本研究における位置づけを新たにすることとなった。
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