2021 Fiscal Year Research-status Report
近代的書記言語の形成過程の解明-ベトナム語の虚詞と文法史的変化を通して-
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19K23047
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Research Institution | Kanda University of International Studies |
Principal Investigator |
鷲澤 拓也 神田外語大学, 外国語学部, 講師 (30847083)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 近代書記言語 / ベトナム語 / 文法機能語 / 文法化 / 近代文学 / 20世紀前半 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に購入し、OCRスキャンによりデータ化したベトナム近代文学の書籍について、業者に作成を依頼したプログラムを用いて、データ分析を行うことができた。20世紀前半に書かれた文学作品の資料6点について、cua(「もの」の意味の名詞から、属格標識へ)とsu(「こと」の意味の名詞から、名詞化を表す語へ)とbi(「被る」の意味の動詞から、受身の標識へ)の文法化の程度を調べるべく、統語的なパターン別に用例を抽出し、使用頻度を計上した。そのうちでsuとbiについては、20世紀前半において文法化の過程にあることを明確に表す根拠が見つかった。その分析結果を論文にまとめ、査読付き雑誌に投稿したところ、採択され、2022年10月に発行予定である。(論文名:「20 世紀前半ベトナム語のsuとbiの用法と文法化」『東京大学言語学論集』44号掲載決定) 今回の抽出方法で設定した統語的パターンが、意図した形での結果に十分につながらなかった部分を踏まえ、より目的に沿った抽出ができるように、いくつかの質問を業者にし、プログラムやタグ付けツールについて追加の説明を受けた。それにより、今後のより的確な分析につなげられるようになった。 母語話者へのアンケートについては、実施には至らなかったが、必要なツールや方法論について、身近な研究者に尋ねて把握し、概要を掴むことができ、質問内容も考えることで、実施に向けて大きく前進した。 古ベトナム語やチュノム、また近代書記言語形成や歴史言語学一般についてのテキストの作成・出版や、関係する分野の研究者の招聘について、続けて構想を練った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
論文1本に至る成果を出せたが、当初期待していたほどの調査結果は得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
用例抽出に成功したcua, su, biについて、詳しく検討していく。さらに、依頼した業者のアドバイスに基づき、目的に沿ってより的確な抽出ができるよう、構想を練る。 20世紀前半の用法が、現代の母語話者から見てどのように感じるか、アンケート調査を行って把握する。 テキストの作成・出版、研究者の招聘に向けて、企画を進める。
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Causes of Carryover |
プログラミング依頼の代金の残りの支払いが、進捗の遅れにより次年度となった。
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