2022 Fiscal Year Research-status Report
19世紀後半のドイツ語文学における「地方」と「ガリツィア」の表象の比較
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19K23090
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
麻生 陽子 南山大学, 外国語学部, 講師 (00844367)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | ガリツィア / ヨーゼフ・ロート / ウクライナ / ハプスブルク |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度もひきつづき、ガリツィア関連の二次文献を収集し、読み進めた。具体的な文学テクストとしては、ガリツィア地方を描いたヨーゼフ・ロートの文学作品(おもに長編小説『偽りの分銅』)を取り上げ、精読を行なった。本作品にかんしては、精読を進めたうえで、口頭発表および活字化を行う予定である。 他方、ロートの文学作品以外のテクストとして、かれが残したガリツィアやポーランド旅行記の分析を行なった。ハプスブルク帝国崩壊後、ポーランド領ルヴウへ旅したさいに発表された新聞記事(「レンベルク」)や、当時のウクライナ情勢にかんするテクストをもとに、ロートの失われた故郷である多民族国家にたいするまなざしや、ナショナリズムにたいする否定的な見解を再確認した。 同時に、現代のウクライナ(ことにウクライナ西部)が表明しているヨーロッパへの帰属意識が、ハプスブルク支配下におけるガリツィアの帰属を歴史的根拠としたものであり、それに関連して、ウクライナにおける「ハプスブルク・ルネサンス」と呼ばれる現象についても調査をはじめたことで、ガリツィア地方に関連する文学研究を行うことの意義をさらに見出すことができた。これらの研究成果については、「ヨーゼフ・ロートが見た「ウクライナ」ードイツ語文学におけるガリツィア地方」と題して口頭発表(南山学会 文学・語学系 春学期研究例会 2022年7月20日)を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度も、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻により、ウクライナのリヴィウへの渡航じたいは実現しなかった。ガリツィア関連の研究をするうえで、リヴィウ訪問は欠かせない。現地で情報を収集することがむずかしく、あらたな着想を得ることも困難な状況にある。 研究が「遅れている」理由としてはさらに、昨年度、職場があらたに変わったこともあり、授業準備等に追われ、研究に集中して取り組むことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に未消化に終わったロート作品にかんする口頭発表および活字化を目指して、テクスト分析を継続して行う。同時に、ロート以外のガリツィア出身の作家としてカール・エーミール・フランツォースにかんする研究にも着手していきたい。 ウクライナの情勢が落ち着きしだい、ウクライナ西部のリヴィウへの渡航を実行する予定である。
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Causes of Carryover |
研究会への参加の大半がオンラインとなり、海外への渡航も実現しなかった。次年度は、おもに文献および消耗品の購入に研究費を使用する。
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