2023 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀後半のドイツ語文学における「地方」と「ガリツィア」の表象の比較
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19K23090
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
麻生 陽子 南山大学, 外国語学部, 講師 (00844367)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | ガリツィア / オーストリア・ハプスブルク / ウクライナ |
Outline of Annual Research Achievements |
18世紀末にハプスブルク領に組み込まれて以降、帝国の北東の周縁部に位置し、西欧とロシアとの境界領域をなしたのが、オーストリア領ガリツィアである。第一次世界大戦を機にハプスブルク帝国が崩壊した後、ガリツィアという名前も地図から消滅した。しかしながら文学テクストのなかで、ガリツィアは多民族共生時代を象徴する歴史的・文学的な空間として繰り返し描かれてきた。さらに2022年春にロシアによるウクライナへの侵攻が開始されて以降、ウクライナは世界にふたたび注視されている。 東西で分断されてきたウクライナの動向にたいする理解を深めるためにも、第一次世界大戦後にウクライナ西部のリヴィウに赴いた、東ガリツィア出身のドイツ語作家ヨーゼフ・ロートの旅行記『ガリツィアへの旅』(1924)にかんする分析を行った。ロートはこの時期のポーランドのナショナリズムの動向を敏感に察知しながらも、この地になおも息づいくハプスブルク時代の多民族・多言語・多様性という痕跡を確認するように活写し、過去を古き良き時代として回顧している。 第二次世界大戦によって民族的多様性は失われ、ユダヤ文化は破壊されてしまった。それでもなお戦火等を生き延び、現存する建造物等には、ガリツィアの痕跡をたどることができる。そうした試みとして、最終年度である2023年度末には、もうひとつの科研費(21K12967)も併用する形で、オーストリア領ガリツィアが位置したポーランド南部クラクフにて現地調査を行った。(ほんらいはガリツィアの中心都市であったリヴィウに赴く必要があるが、研究期間(2019年)が新型コロナウイルス感染症の流行と2022年以降のロシア・ウクライナ戦争が重なったため、実現できていない。)ポーランドのガリツィア関連の博物館では、ガリツィアの歴史を豊富な映像資料をもとにたどることができた。
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