2023 Fiscal Year Annual Research Report
Estimating the contribution of forest infrastructure investment during logging operations considering current and future timber volume
Project/Area Number |
19K23211
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
安達 啓介 神戸学院大学, 経済学部, 講師 (50846780)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 割引現在材積 / 割引現在材積法 / シカ対策 / 森林インフラ / 林業投資 / 社会的な効率性 / 費用効果分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ニホンジカの個体数の急増や生息分布域の拡大を背景に、全国各地でシカの過採食や剥皮行為による森林被害が深刻化している。林業においては、スギやヒノキなどの人工林への被害が経営上の大きな課題となっており、特にシカの食害による造林木の成長阻害や枯死、将来的な木材価値の低下などの経済的被害が確認されている。このようなシカによる森林被害を減らす手段として、シカの侵入を防ぐための防鹿柵や、立木1本ごとの保護を目的とした保護資材の設置などのシカ対策の必要性が高まっている。しかし、シカ対策の効果や経済性を検証する研究は多くあるものの、それを厳密に測定・評価するための手法について議論や研究蓄積はまだまだ少ない。 シカ対策の被害防除効果は、森林作業道や山土場などの森林インフラと同様に、長期にわたって森林施業および将来の収穫物に持続的に発揮されるものである。そのため、短期的な評価だけでなく、中・長期的な視点から個々の対策の効率性や採算性を継続的に評価し、その結果を林業経営に適宜にフィードバックしていくことが重要となる。 最終年度は、安達(2022)で提示された現在から将来にわたっての収穫量と収穫材の経済的価値を反映した森林インフラの貢献度および費用推定の理論(以下、割引現在材積法)をもとに、シカ対策の経済性や社会的にみた効率性を、詳細かつ明快に分析・評価できる手法およびその分析事例を示した。具体的には、造林・保育期における初期投資として処理されがちなシカ対策費用を、将来の収穫材の量や質などの長期的な林業経営要素を組み入れつつ、将来の収穫をともなう施業年度の事業評価に落とし込むことが可能な評価手法を提示した。また、シカ対策の有無によって生じる木材の期待損失を比べることで、どの対策が効率的かを厳密に分析できることも示した。
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