2019 Fiscal Year Research-status Report
国語科と外国語活動・外国語科の間をつなぐ「ことばの教育」の開発に向けた基礎的研究
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19K23296
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
山田 深雪 玉川大学, 教育学部, 准教授 (90846859)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 言語教育の課題 / 言語を扱う教科間の乖離 / 外国語への抵抗感 / 学習者の意思の言語化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国語科と外国語活動・外国語科(以下:外国語科)の言語力育成に対するばらつきがあることを問題と捉え、国語科と外国語科の間をつなぐ「ことばの教育(科目『ことばと文化』)」を開発するための理論的基盤を構築しようとするものである。 2019年度は、研究実施計画の(1)母語と外国語をともに「ことば」として学ぶ価値を明らかにするために、日本の言語教育の課題について、文献調査及び先行研究の分析を行うことを行った。 2019年10月には、第137回全国大学国語教育学会の課題研究「国語教育の多層性①」において、「国語教育と外国語教育を架橋する実践開発から見えてきたことー『寛容』という視座からの考察ー」と題し、自身の過去の教育実践の成果と課題について発表した(2020年度に同学会より関連書籍発行予定)。同年11月、調査のサンプルとなる授業(動画)の撮影を行った。2020年2月、文献調査や先行研究結果をもとに洗い出した「国語科と外国語科を隔てる要因」に該当する授業部分を取り出したサンプル映像を介しながら、公立小学校教員3名への多声的ビジュアルエスノグラフィー調査を実施した。その結果、①教員は国語科と外国語科を「共に言語を学ぶ教科」として殆ど意識していないこと【言語を扱う教科間の乖離】、②外国語科の指導法は、文科省の研修を受けて派遣された推進教員の授業を踏襲したものであり、国語科に比べて外国語科は、教員自身による指導の工夫が少ないこと【外国語への抵抗感】、③国語科では「教師の求める正解」を、外国語科では「習った単語や文」を学習者が話しており、「自分が話したいことを話す」機会が非常に少ないことが言語教育の課題として明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フランスの「先立つ哲学教育」及びオープンダイアローグの対話理論をもとに、国語科と外国語活動・外国語科の間をつなぐ「ことばの教育」の基盤となる思想を明らかにする予定であったが、2020年1月から発生した新型コロナウイルスの影響により、フランスでの海外調査を進めることができなくなった。現在はフランスの「先立つ哲学教育」及びオープンダイアローグの対話理論については文献調査に止まっている。 文献調査を進めた結果、フランスの哲学教育に関する先行研究は複数あるが、オープンダイアローグの対話理論の教育への援用に関する研究は途上であることが明らかになった。2109年度の調査で明らかになった言語教育の課題の3点目【学習者の意思の言語化】の解決への示唆を得るためには、オープンダイアローグの発祥であるフィンランド西ラップランド地方での調査に切り替えることも検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進について、本研究の実施期間を1年延長したい。理由は2点である。 1点目は、新型コロナウイルスの世界規模の拡大により、海外調査が実施できないためである。2点目は、所属大学も調査研究を依頼した教育委員会・学校も政府による緊急事態宣言が最初に発令された7府県にあたる。そのため本年度は、小学校の授業時数が逼迫しており、計画の最終段階で行う「科目『ことばと文化』の授業実践」への協力の依頼することができない。このような理由から、研究の目的を達成するためにも本研究の実施期間を2021年度までとしたい。
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Causes of Carryover |
海外調査が新型コロナウイルスの影響により、計画・実施することができなくなったため。新型コロナウイルスの拡大が収束次第、海外調査を実施する。
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Research Products
(1 results)