2019 Fiscal Year Research-status Report
国際バカロレアの教育方法導入の意義と課題―社会科系科目に焦点を合わせて
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19K23314
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
次橋 秀樹 京都大学, 教育学研究科, 研究員 (30852123)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | IB教科書分析 / IB試験問題分析 / 実践校訪問 / 資料収集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本の学校教育に対して国際バカロレア(IB)の教育方法の導入がどのような意義と課題をもつのか、社会科系科目のテキストや授業実践をもとにして明らかにすることを目標としている。IBの教育方法の意義と課題を検討するために、IBの求める「広さ」(学習範囲・用語知識)と、「深さ」(思考力・判断力・表現力等)の内実を明らかにする必要がある。 当該年度の研究においては、教科書分析を通してMYP(前期中等教育)の学習範囲と、最終試験問題分析を通してDP(後期中等教育)の学習範囲を明らかにする点で研究が進んだ。Hodder Education社から出版されているMYP「個人と社会」のテキストによれば、IBの学習範囲は、日本の中学社会と歴史・地理・公民の領域において、日本に関わる歴史・地理・政治システム以外については大きく変わるものではなく、広い範囲をカバーするものであった。しかし、概念理解と問いの探究を中心に組み立てられた単元構成や教育方法については、日本の現行教科書と大きく異なっている。一方、DP最終試験においては概念理解を問うために限定された範囲の中で長文記述問題が課されている。 日本のIB校では、知識の習得にとどまらない深い理解へと導き、こういった問いに対応するためにも、知識を構造化し、パフォーマンス課題を含めた単元を構想して実践を行っている。ただし、国内の大学受験も見据えながら一条校として学習指導要領で定められた学習範囲をくまなく学ぶためには教育課程編成上の難しさがあることや、生徒にとってより高次な概念理解そのものの難しさといった課題があることも実践から読み取ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IB実施校の訪問や教師へのヒアリング、書籍からの情報収集、過去問研究については順調に進展している。国内で行われる国際バカロレア機構が主催する公式のワークショップにも参加予定だったが、2020年3月の実施が見送られたため、年度内の受講はかなわなかった。改めて、2020年8月以降のワークショップに参加する予定。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、IBの「深さ」の分析については、概念理解の内実を明らかにするために引き続きEricksonの文献にあたる。また、DP(後期中等教育)の最終試験の内容に合わせて評価基準を詳しく見ることも進めていきたい。 日本の学校のIB受容については、調査対象校とヒアリング対象教師を増やし、より情報を集めていきたい。 なお、公式ワークショップの設置・開催は国際バカロレア機構次第のところがあるため、ワークショップからの情報収集に関しては予定として確かではない部分がある。
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Causes of Carryover |
参加予定のワークショップが中止となり、別途書籍購入等に充てたが一部が次年度使用額となった。次年度物品費として使用させていただく予定。
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