2019 Fiscal Year Research-status Report
幼児は他者にとって大切な人形に心的状態を付与するか?
Project/Area Number |
19K23330
|
Research Institution | Minatogawa College |
Principal Investigator |
大塚 穂波 湊川短期大学, その他部局等, 講師 (80847947)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 心的付与 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は,幼児期の子どもが日常の生活や遊びの中でどのような事物に心的付与を行っているのかについての実態を把握するための調査を行った。保育者を目指す大学生を対象に,身近にある様々な物に対して心的付与を行った経験の頻度を尋ねるとともに,そのような経験に関する記憶の鮮明度や確信度についても尋ね,そのような経験が自伝的記憶として,保育者を志すことにどのように影響を与えているのかについても探索的に検討した。また,事物への心的付与に関連が深いと考えられる「空想の友達」の有無についても尋ね,これらの経験の関連について検討した。その結果,様々な事物に心的付与を行うことは,多くの人が経験していたのに対して,「空想の友達」がいた経験がある人は20%以下であり,両者の明確な関連は得られなかった。事物に心的付与を行った経験について,その事物が自分にとってどのような存在であったかという質問に対しては,「家族・ペット」や「友達」といった身近な存在を挙げる人が多かった。このような経験の頻度に関して,「ときどきあった」と回答した人よりも「ごくまれにあった」と回答した人の方が,経験の記憶の鮮明度や確信度が高い傾向があることが示された。このことから,身近な事物に心的付与を行った経験の頻度によって,自伝的記憶の形成に違いがある可能性が示唆された。これにより,幼児期の子どもが様々な事物の心的付与を行うという経験についての予備的知見が得られた。さらに,事物に心的付与を行う経験の意味づけの仕方によって,アイデンティティの形成過程にも影響がある可能性を示しており,幼児の空想に関する認識の個人差について新たな視点を提供するものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幼児を対象とする実験研究を行う上での予備的調査が終了し,本実験への準備が整っているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は幼児期の子どもを対象に,実際の遊び場面の中で人形や様々な物をどのように用いているのかについて,観察的手法を通して明らかにする。一人ひとりの子どもの遊びの特徴を把握したうえで,冬期休暇中を利用して個別にインタビューを行い,心的付与の傾向についてさらに検討を行う。
|
Causes of Carryover |
実験手続きを精査した結果,予定していた人件費及び交通費が不要になったため。また,新型コロナウィルス関連により,予定していた出張費が不要になったため。次年度は調査方法及び分析手法のための物品費及び人件費として使用する。
|
Research Products
(2 results)