2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K23607
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松田 祐典 岡山大学, 歯学部, 客員研究員 (90845752)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 再生医療 / 心筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の前年度である2019年度の研究実績として、成熟した心筋組織の作成を目的に、ヒト由来のiPS細胞とヒト歯肉線維芽細胞を共培養させ、心筋細胞へ分化誘導させる過程に培養細胞伸展システムによるストレッチ刺激を加えた。作成した心筋組織(iPS-CM)に対して、遺伝子レベルでの分化度の評価のためqPCRを行った。心筋細胞関連マーカーとしてNkx2.5、cTnT、多能性マーカーとしてSox2、Oct4を使用した。ストレッチ刺激を与えた組織(以下ストレッチ群)は対照群と比較して有意に心筋関連マーカーが増加した。一方で、ストレッチ群の多能性マーカーは統計学的に有意でないものの、対照群と比較して減少傾向にあった。また、タンパク質レベルでの評価のために免疫染色を行った。心筋細胞関連マーカーとしてcTnT、MYL2を使用した。これらのタンパク質の発現はストレッチ群、対照群の両方で著明であり、いずれもサルコメア構造が認められた。cTnTの発現は比較的広い領域で観察されたが、MYL2の発現はストレッチ群と対照群の両方でまばらであった。組織の配列について、ストレッチ群では伸展方向と平行な心筋組織の配列が観察されたが、対照群では明らかではなかった。さらに、組織の微細構造の形態学的比較のため電子顕微鏡を用いて観察を行った。対照群のサルコメア構造と比較して、ストレッチ群のサルコメア構造は有意に大きいことが分かった。 2020年度の研究実績として、iPS-CMの収縮について位相差顕微鏡動画像を撮影し、収縮能をベクトル場を用いて定量化した。結果として、ストレッチ群は収縮能の増加が観察された。さらにストレッチ前後の収縮能の増加は対照群と比較してストレッチ群に有意に観察された。以上の研究結果より、ストレッチ刺激はiPS細胞の心筋細胞への分化の成熟に影響を及ぼす可能性があることが示唆された。
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