2020 Fiscal Year Research-status Report
Wntシグナル経路を介した薬物代謝酵素の変動が精神神経疾患治療に与える影響の解明
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19K23810
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
榊原 有季子 名城大学, 薬学部, 助教 (40848503)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | Wntシグナル経路 / グルクロン酸転移酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
Wntシグナル経路は、薬物代謝酵素の発現を変動させることが知られている。本研究では、Wnt/β-catenin(β-cat)経路を介したグルクロン酸転移酵素(UGT)の発現変動について明らかにすることを目的とした。 Wnt/β-cat経路を活性化することが報告されている塩化リチウム(LiCl)をラットヘパトサイトに曝露し、UGT1A分子種のmRNA発現変動を検討した。30 mM LiClの曝露によりUgt1a1およびUgt1a6 mRNAは、それぞれ、コントロール群の63%、62%まで有意に低下した。次に、ラットヘパトサイトと同様に、ヒトヘパトサイトに対し30 mM LiClを曝露させた結果、UGT1A1およびUGT1A6 mRNAはそれぞれ、80%、68%まで有意に低下した。これらの結果から、ラットおよびヒトヘパトサイトにLiClを曝露させた際のUGT1A1およびUGT1A6の発現変動に種差は生じないことが示された。一方、ヒト肝由来細胞株Huh-7にLiClを曝露した際には、UGT1A1 およびUGT1A6 mRNAは有意に増加した。従って、ヘパトサイトとHuh-7では、LiClによるUGT1A mRNAの発現変動メカニズムが異なる可能性が示唆された。また、この差異の要因を解明するため、β-catの標的遺伝子であるLGR5 mRNA発現量を比較したところ、ヘパトサイトでは検出限界以下であった。したがって、Wnt/β-cat経路の活性化にはヘパトサイトとHuh-7の間に差異があると考えられ、LiCl曝露時のUGT1A mRNAの発現変動が細胞間で異なる要因の一つであると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度では、ヘパトサイトにLiClを曝露させた際のUGT発現変動に関して、予定していた検討は概ね実施できたが、Wnt/β-cat経路を活性化する他の薬剤の検討に着手できなかったため。また、ヘパトサイトとHuh-7を用いた検討では、LiClによるUGT1A分子種の変動に予期せず、細胞間の差異が生じたことから、その差異を明らかにすべく、検討内容を見直す必要が生じたため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、Wnt/β-cat経路を活性化する他の薬剤での検討を進め、UGTの発現変動が認められた薬物をラットに投与し、ラット肝および脳でのUGT発現変動についてin vivoでの検討を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)研究の進行がやや遅れており、消耗品に使用する経費が予定よりも少なくなったため。 (使用計画)動物購入費、細胞培養試薬、mRNA測定試薬、その他薬剤の購入に充てる。
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