2020 Fiscal Year Research-status Report
革新的なHIV治癒戦略をめざした新規HIV-1感染制御宿主因子の探索同定
Project/Area Number |
19K23860
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
助川 明香 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (40844379)
|
Project Period (FY) |
2020-02-01 – 2022-03-31
|
Keywords | HIV-1 / エイズ / 宿主因子 / 感染制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、HIV-1感染増殖伝播を制御する新たな宿主側要因を探索同定し、それらの機能解析をおこなうことで、これまでにない新たなHIV治療法の開発を目的としている。所属研究室では、HIV-1感染標的細胞である3種のTリンパ球細胞におけるHIV-1感染感受性の違いを見出しており、HIV-1感染低感受性細胞では、逆転写初期過程のウイルスcDNA合成量の顕著な低下を認めている。 2020年度は、HIV-1感染感受性を制御する宿主候補因子の抽出を目的として実験をおこなった。 まず、HIV-1感染感受性の異なるTリンパ球細胞の性状解析を目的とした(i)異核共存体(ヘテロカリオン)を用いたHIV-1感染実験、(ii)mRNA発現動態差異の見極めを目的としたマイクロアレイ解析、の異なる2つの実験結果を基に、HIV-1感染抑制への関与が考えられる、29種類の宿主因子を候補因子として選定した。 次に、これら宿主候補因子の特異的かつ安定的発現制御(ノックダウン)細胞を樹立し、HIV-1感染効率の変化の有無を評価した。ノックダウン細胞の樹立には、各宿主因子に対して、2-3種類の異なる領域を標的としたshRNAを用いた。細胞樹立後、ルシフェラーゼ遺伝子が挿入されたVSVGシュードタイプのウイルスを感染させ、ルシフェラーゼ発現を指標としてHIV-1感染効率の変化を解析し、親株と比較して2.5倍以上のルシフェラーゼ発現を認めた6種類の宿主因子を選定した。選定した6種類の宿主因子に対して、mRNA量の定量を目的として、one-step RT-PCRの条件検討をおこない、条件が決定した4種の宿主因子に対して、ウイルス感染実験およびmRNA量の定量をおこなった。 結果、mRNA量の低下に伴い、HIV-1感染効率が上昇していた宿主因子AおよびBの2つを、HIV-1感染抑制に関わる宿主候補因子として抽出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナウイルス感染拡大に伴い、本学附属病院の医療従事者を対象としたコロナウイルスPCR検査業務への兼務発令がなされ、従事する必要性が出たこと、更には、東京都における緊急事態宣言の発出により、保育園の休園や、本学の研究活動レベルの引き下げの決定がされたことにより、進捗状況に多少の影響が出ている。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度の実験結果から抽出された、宿主因子AおよびBの2つに関しては、機能遺伝子のノックダウンにより得られた結果が機能遺伝子特異的であるか否かについて、再構築細胞を樹立し、HIV-1感染効率復帰の有無について検討する。 また、申請者が見出したhMRC1のウイルス放出抑制機序の解析により、ウイルス放出機序の理解を更に深めることを目的とし、hMRC1発現環境下においてHIV-1粒子内に取り込まれる候補因子の同定を試みる。方法としては、hMRC1存在・非存在下にて放出されたウイルス粒子を、ショ糖密度勾配により濃縮精製後、二次元電気泳動にて分離し、hMRC1存在下にのみ検出される画分から質量分析をおこなうこととする。
|
Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大に伴い、当初の実験進捗状況に変化が生じたため、当該助成金が生じた。
|