2019 Fiscal Year Research-status Report
プロリンの異性化制御異常による神経変性疾患発症機序の解明
Project/Area Number |
19K23976
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
中西 真理 奈良県立医科大学, 医学部, 特別研究員 (40850102)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ALS / LC ドメイン / PRポリジペプチド / PPIase |
Outline of Annual Research Achievements |
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)をはじめとする神経変性疾患に関して、近年、low-complexity(LC)ドメインの機能異常が関連していることが明らかとなってきており、LCドメインにおける遺伝子変異の多くがプロリンに生じているという特徴がある。また、ALS発症の最も頻度の高い原因とされる、C9orf72遺伝子の異常な繰返し配列を持つ患者由来の細胞で、プロリン・アルギニン(PR)ポリジペプチドを含む複数の病的な毒性ポリペプチドが作られ、過剰発現するPRポリジペプチドのLCドメインへの結合が、ALS発症機序の起因となっているとされている。本申請では、LCドメインを有するタンパク質のプロリン変異を含む疾患由来変異の解析と、プロリンの異性化を制御しているpeptidyl-prolyl cis/trans isomerase(PPIase)のNMR法を用いた構造解析を行うことにより、LCドメインに遺伝子異常を持つ神経変性疾患の病態機序を解明することを目指している。 そこで、C9orf72由来のPRポリジペプチドが、Kapβ2とどのように反応するか確認するため、透過型電子顕微鏡観察による形態学的評価を行うための実験系の確立を探索した。さらに、先行研究によってPPIaseの一種であるPeptidylprolyl isomerase A(PPIA)が、ALSの原因遺伝子の一つであるhnRNPA2 の、 LC ドメインのポリマー形成を制御することが明らかになっていることから、まずPPIAを中心にPRポリジペプチドによって阻害されたKapβ2のNMR解析を行うため、実験の至適条件の検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究に必要な設備が整っており、本研究における実験についての知識や技術を教えてもらえる環境も整っていたため、新たな分野での研究であったが、順調に研究を進めることができている。生化学的アッセイを行うための、ALSの遺伝子変異を導入したLCドメインの調整、検証方法の探索を行った。さらに、先行研究によってPPIAが、ALSの原因遺伝子の一つであるhnRNPA2 の、 LC ドメインのポリマー形成を制御することが明らかになっていることから、まず、PPIAを中心にNMR解析技術を用いた解析を行うため、条件検討等行った。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに検索してきた条件を用いて研究を進める。具体的には、ALSの遺伝子変異を導入したLCドメインを調整し、そのLCドメインを用いてヒドロゲル結合法による、ポリマー化の有無を検出し、LCドメインによるcross-βポリマーの形成を検証する。さらに、PPIAのNMR立体構造解析による解析を行い、PPIaseによるLCドメインの認識メカニズムを明らかにするための研究を進める。
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Causes of Carryover |
新たな試薬が発売されていたりして、条件検討後、使用予定試薬を変更したりしたため。また、学会発表を行うにはデータが十分でなく、学会に参加しなかったため。
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