2019 Fiscal Year Research-status Report
歯周炎による血液脳関門障害遺伝子の解析およびアルツハイマー病への影響
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19K24078
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
森川 哲郎 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (90845463)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 血液脳関門 / LPS / 歯周病 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳には血液脳関門(Blood Brain Barrier: BBB)があり、血液中から脳組織への物質の移行は厳密に制限されている。近年、正常なヒトの脳組織には見られない歯周病原菌であるPorphyromonas gingivalis(P. gingivalis)がアルツハイマー病患者の剖検脳組織において検出されたとの報告がある。また、マウスを用いた研究においても、脳内からP. gingivalisやP. gingivalis由来の内毒素が検出され、脳内のアミロイドβタンパクが増加していることから、歯周病原因菌のアルツハイマー病への関与が示唆されている。しかし、P. gingivalisがどのような機序でBBBを通過しているのかについては未だ明らかとされていない。そこで本研究では、P. gingivalis由来のLPSを用いて、BBBを障害した後に脳海馬へ到達し、アルツハイマー病の発症・進行に影響するかについてそのメカニズムを明らかにすることを目的とする。そこで、BBB構成細胞の1つであり、物質の輸送において重要な役割を担っているとされるヒト脳血管内皮細胞を用いた。今年度はP. gingivalis由来LPSの濃度を決めるために0,0.1,1.0,10,100 μg/mlの濃度で細胞毒性試験を行い濃度の決定を行なった。その後、決定した濃度(1.0 μg/ml)を用いてヒト脳血管内皮細胞に、P. gingivalis由来LPSを添加し24時間の短期培養を行った。コントロール群には蒸留水を添加した。その後、培養細胞からRNAを抽出し、細胞間隙輸送を制限しているタイトジャンクションの構造と機能を担う接着分子の1つであるクローディン5の発現について定量的PCRを用いて確認した。その結果、P. gingivalis由来LPS刺激がクローディン5の発現を低下させる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由としては、当初の予定ではBBBを構成しているヒト脳毛細血管内皮細胞、アストロサイト、ペリサイトをそれぞれ単独培養し、申請者の研究グループで確立したLPS長期添加培養システム下で培養を行う予定であった。しかし、短期間培養での発現変化が確認できる遺伝子の探索に時間を要してしまったため、現在のところヒト脳血管内皮細胞へのP. gingivalis由来のLPS添加にとどまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、ヒト脳血管内皮細胞を長期培養し、短期培養で確認した遺伝子発現について検討する。その後、アストロサイト、ペリサイトについても同様の実験を行い、P. gingivalis由来のLPSの添加がどのような影響を与えるのかについて明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
計画では3種類の細胞を購入し研究を行う予定であったが、1細胞だけの購入にとどまった。次年度は、細胞購入とそれに伴う試薬等を購入する予定しているため、物品費の使用が想定される。
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