2019 Fiscal Year Research-status Report
超高齢社会における義歯開発に向けたタンパク付着抑制を持つMPCポリマーの応用研究
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19K24153
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
塚原 明弘 昭和大学, 歯学部, 助教 (60847028)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 超高齢社会 / MPC / デンチャープラーク |
Outline of Annual Research Achievements |
義歯に付着したデンチャープラークによる粘膜疾患や誤嚥性肺炎の発症を予防するためには,デンチャープラーク内に存在する細菌や真菌の付着抑制が重要である.しかしながら高齢者の大多数は複雑な形状の義歯を効果的に洗浄することは非常に困難である. 本研究の独創性として,汚れを取るのではなく, “汚れない義歯”の開発を目指している. 本研究までに,共同研究者(東京大学マテリアル工学 石原ら)が開発した優れた生体親和性とタンパク吸着抑制能を有する2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine(MPC)を用いて,“汚れない義歯”の開発を行った.過去の研究から,MPCにより基礎研究では細菌付着抑制能,また臨床研究ではデンチャープラーク付着抑制が確認され,この時点で“汚れない義歯”の開発は概ね達成できたが,さらに次世代シークエンサーを用いた解析によりデンチャープラーク細菌叢の網羅的解析と,MPCによりプラーク付着抑制効果に加えプラーク細菌叢を変化させない可能性も示唆された. そこで本研究ではシークエンス解析により判明した疾患に関連する細菌に対し,より盤石な付着抑制能あるいは新たに殺菌作用を示すようなMPCを模索・開発することを目的としている.これにより自身での義歯清掃が困難な高齢者,あるいは高齢者入居者施設などでの義歯ひいては口腔内衛生状態を高く保つことが可能になり,現状の超高齢社会に大きく貢献することができると考えられる. 現在も引き続きMPCに修飾可能な側鎖の探索や酵素Lyt100に関する文献を参考にし添加法がないか模索中である.また歯科用照射器を用いて反応する新MPC開発も同様であり,歯科用照射器で感応するポリマー開発についても現在模索中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の目標は歯科用照射器で感応する新MPCの開発,またMPCに修飾できる側鎖の発見であったが難航しており予定通りには進んでいない.歯科用照射器で感応する新MPCは機器の照射力が一定であるためMPCがコーティング面に固定できず期待通りの効果を発揮できていない.また側鎖についても修飾方法を模索中であり,今後も引き続き検討中である.
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Strategy for Future Research Activity |
現状では歯科用照射器でコーティングを行い抑制効果を発揮できるような効果は得られておらず,修飾用側鎖の候補となる酵素の発見や先に挙げた酵素Lyt100の修飾方法も発見でき得ていない. 次年度の計画として今後研究を進める上で必要な付着抑制試験で使用する細菌の購入や,培養で使用する基板・機器の購入や可能であれば学会報告などを行う予定である. また,研究協力者である東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学先行石原教室と共に新MPCの開発を検討すると共に修飾する側鎖についても検討を進める予定である.
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Causes of Carryover |
本年度研究を進める予定であったが,当初予定していたよりも新MPCの検討が仕切れておらずしたがって実際に合成する方向に動いていないため費用がかからなかった点と,検討していた修飾酵素についても同様で酵素の修飾方法,修飾側鎖用の酵素が検討しきれていないためこちらについても費用がかからなかった. また近年の社会情勢にも影響され,共同開発者とのまとまったミーティング機会にも恵まれず思うようには進められていない. そのため当初予定していた研究費が使われずに一部翌年へ持ち越すこととなった.本年度は予定していた研究に加え研究に必要な材料の購入などを予定している.
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