2010 Fiscal Year Annual Research Report
紅藻類に含まれるフグ寄生性カイアシ類の新規駆虫成分に関する研究
Project/Area Number |
20580220
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
浅川 学 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 准教授 (60243606)
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Keywords | フグ / カイアシ類 / 寄生虫 / 興奮性アミノ酸 / NMR / LC-MS / 紅藻類 / カイニン酸 |
Research Abstract |
本研究では、紅藻類に含まれる生理活性物質探索の一環として、紅藻類を対象にフグ寄生性カイアシ類P.fuguの駆虫物質の探索研究を行い、今年度は活性成分を単離することができたのでその諸性状に検討を加えた。活性成分の精製過程において、ODSカラムクロマトグラフィーにより溶出した1%AcOH-10%CH_3CN画分(Fr.I)、H_2O画分(Fr.II)、MeOH画分(Fr.III)を薄層クロマトグラフィー(TLC)に供したところ、Fr.Iは、カイニン酸(Rf=0.30)を主成分としていたが、既知アミノ酸10成分とRf値の一致しない未同定成分(Rf=0.53)を含むなどその組成は特徴的なものであった。また、100%MeOHで溶出したFr.IIIは、Rf値がカイニン酸(Rf=0.30)と一致する1成分のみを含んでいた。次に、Fr.I-IIIをLC-MS分析に供した。Fr.I-IIIの各画分からカイニン酸が検出されたが、一方、カイニン酸(m/z=214)クロマトグラムに関して、Fr.II,IIIとカイニン酸標準溶液との保持時間において明らかな相違が見られた。さらに、Fr.IIIをカイニン酸アナライザーに供したところ、標準溶液と一致するピーク(保持時間9分)と同時に異なるピーク(同11分)が検出された。以上の結果から、今回の精製過程を通して、カイニン酸異性体と考えられる成分を単離できる可能性が期待された。紅藻類マクリD.simplexには、フグ寄生性カイアシ類P.fuguやマダイ寄生性カイアシ類に対する駆虫活性成分が含まれ、その主成分は興奮性アミノ酸の一種であるカイニン酸(C_<10>H_<15>NO_4、分子量213)であることが示された。一方、マクリにはカイニン酸以外に分子量(213)を同じくする異性体、すなわち、LC-MSでは、カイニン酸としてm/z=214(M+H)^+が観測されるが、保持時間が異なるにもかかわらず同様にm/z=214(M+H)^+が観測される成分の存在することが、確認された。この成分の存在はHPLC、LC-MS,NMRによっても支持された。 本異性体の構造活性相関の解明が新薬(寄生虫駆除薬)の開発の鍵となるであろう。
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Research Products
(4 results)