2020 Fiscal Year Annual Research Report
子ども向け出版物の中のレーニン像: 個人崇拝と国民の教化
Project/Area Number |
20H00683
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
福間 加容 九州産業大学, 美術館学芸室, 学芸員
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | レーニン / イメージ / 子ども |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ソ連期における、イメージ(視覚表象)を通じた、子どもの国民化について考察するものである。調査の対象として、本研究では、ソ連期に大きな紙芝居のような、特殊な出版物が制作されており、その大半が、レーニンを主人公にした物語だったことに注目した。それらは、上質な厚手の大判の紙に多色刷りで、子どもたちにむけてつくられていた。コロナ禍により、現地での資料収集が不可能になったため、モスクワの国立図書館図像部とオンラインでコンタクトし確認してもらって、資料を収集することができた。 資料を分析した結果、ほとんどの作品が民衆木版画を思わせるようなスタイルで制作されていたことが分かった。もっとも多く描かれた物語は、M.ゾシチェンコ『レーニンの物語』(1939)の16の物語の中の「デカンタ」と、Ia.ピニャソフの『ふつうのミトン』(1980)であった。日々の子どもの遊び、いつもそばにいる優しいお爺さんという、何の変哲もない日常体験の情景から、子どもたちはレーニンのイメージに導かれる。 これらの出版物は、停滞の時代と言われるブレジネフ期に制作されていた。この出版物はプロジェクターの要る映像より持ち運びが楽で、簡便に上演できたであろう。レーニンについて書かれたいくつもの物語の中から、このメディアのために選ばれた物語は、ブレジネフ期の体制が特に何を子どもに望んだかを端的に示していると思われる。 本研究では、レーニンのイメージを通じて、体制の永続化を図る、ソ連政府の文化政策の一部を明らかにした。子どもにとって身近な存在としてレーニンを歴史化する物語とイメージを紡ぎ出すことで、子どもに倫理的規範と国の「祖父」としてのレーニンを敬愛する心を育むことが目的としていたのである。
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Remarks |
イチン教授(ベオグラード大学)特別講演会「セルビア・アヴァンギャルドとヨーロッパ」 多言語雑誌『頂上(Zenit)』(1921-1926)の活動を中心に 企画:福間加容(九州産業大学付属美術館)共催;科研(B)18H00655 「ロシアとコーカサス諸地域の文化接触:受容と変容と離反のダイナミズム / 科研(B)22H00650「モスクワ・ベルリンを結ぶ革新的芸術理念」2023年2月4日於九州産業大学
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