2020 Fiscal Year Annual Research Report
高等学校農業科における糖度を教材とした批判的思考力を育む授業の開発と評価
Project/Area Number |
20H00773
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Research Institution | 福井県立若狭東高等学校 |
Principal Investigator |
水島 智史 福井県立若狭東高等学校, 教諭
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | 学力の三要素 / 思考力・判断力・表現力 / 農業教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的:学力の三要素の一つとして「思考力・判断力・表現力等の能力」があげられる。思考力等の育成において,高い頻度で育成が求められる資質・能力の一つとして「批判的思考力」がある。批判的思考力に関す学習指導の実践は,共通教科で先行しているが,農業科でも充実させる必要がある。一方,糖度(Brix値)は,農産物の味の一指標として使われるが,測定方法の原理上,糖度(Brix値)が高い農産物が甘いとは限らない。そこで,糖度(Brix値)を題材として,生徒の批判的思考力を育む指導方法を考案し,授業実践を行った。 研究方法:授業実践で扱う農産物として,学校農場で生産されている野菜のうちトマトを選定した。トマトの糖度は,果皮の着色程度や栽培方法,品種で異なり,教材として適すると考えられた。次に,糖度やBrix値に関する意識調査を行った。これらの結果をもとに,糖度(Brix値)が高いトマトは甘いと「いえる」もしくは「いえない」のどちらであるか仮説をたてるよう生徒に求めた。さらに,グラニュー糖,クエン酸および食塩の10%(重量比)水溶液をそれぞれ糖度計で測定し,仮説に対する結論と感想の記述を求めた。また,授業実践の前後に批判的思考力に関する質問紙調査を行った。 研究成果:用語としての糖度の認知度は高かった。グラニュー糖,クエン酸および食塩の10%水溶液の糖度(Brix値)は,それぞれ約10,9および12であり,糖を含まない水溶液でも数値がでることを示すことができた。多くの生徒は,授業実践前は糖度(Brix値)が高いトマトは甘いと考えていたが,各水溶液の糖度を測定したことで,糖度(Brix値)と甘さは必ずしも同じではないと理解できたと考えられた。また,批判的思考力に関する質問紙調査では,授業実践後に有意に数値が上昇した。したがって,考案した指導内容は,生徒の批判的思考力を育むために有効と考えられた。
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