2020 Fiscal Year Annual Research Report
高校数学での概念受容学習における事例効果の実証研究
Project/Area Number |
20H00794
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
成瀬 政光 早稲田大学, 本庄高等学院, 高等学校教諭
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | 高等学校数学 / 事例効果 / 焦点事例 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は高校数学での概念受容学習において,生徒に与える焦点事例によって,その理解度が異なるのか(事例効果)を検討し,考察を与えるものである.「事例効果」とは「知識の一般化可能性がルール教授セクションで用いられた事例によって影響される現象」(工藤, 2003, p.281)である.事例効果に関する先行研究は麻柄・伏見(1982)や伏見・麻柄(1986)の三角形・四角形の概念教授に関する成果が挙げられる.しかし,高等学校の数学内容に関する事例効果の実証研究はほとんど行われてないといえる.そこで本研究では,高等学校の数学内容に関しても事例効果が生じうるのか,生じるとすればどのような要因が考えられるのかを考察することを目的とする.本研究にて得られる成果は授業設計,特に演習問題の設定など,のための1つの示唆を与えるものと期待される. 本研究は対数の性質,無限等比級数という2つの高等学校数学の内容に関する事例効果の実証研究を行った.これらの実践は1) 分析の指標の設定,2) 検定教科書にある公式・焦点事例の分析,3) 本研究における公式・焦点事例の設定,4) 実践・考察,の4つの作業によって構成されている.4)の段階にある実践を通じて,本研究では,例えば,焦点事例の「式の型」によって理解度の差が生じうることなどが推察された.一方で,「扱う数」にバリエーションがあったとしても理解度の差は生じなかった.本研究ではこうした実践ごとの個別の考察をすることはできたが,一般的な言明の段階までには至らなかった.今後の展望としては,理論的枠組みを備えた仮説を提出する段階まで発展させることが求められるだろう.
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