2020 Fiscal Year Annual Research Report
重度・重複障害児の質的変化過程を踏まえた共同注意への働きかけと評価指標の開発
Project/Area Number |
20H00824
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岡本 義治 筑波大学, 附属桐が丘特別支援学校, 教諭
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | 重度・重複障害児 / 共同注意 / トランスクリプト |
Outline of Annual Research Achievements |
〇研究目的:重度・重複障害児の共同注意は、臨床事例により検討されてきた。しかし、学校における自然な共同注意の体系的な評価指標は示されていない。本研究は、共同注意評価指標の構成要素の一つである、重度・重複障害児の共同注意に関する教師の働きかけとその特徴を、認知機能の分類から明らかにすることを目的とした。 〇研究方法:学校における自然な共同注意が行われている個別学習場面をVTRで複数事例記録し、重度・重複障害児の認知機能から分類した共同注意への働きかけとその特徴を、トランスクリプトによる質的変化過程の類似項目により整理し、検討した。 〇研究成果:トランスクリプトによる質的変化過程の類似項目により、重度・重複障害児においても認知機能の発達に対して、二項関係から三項関係が形成される様相が見られた。このことは、教材に視線を向ける、教師の反応に視線を合わせるなど、視線が重要な指標となると考えられた。また、教師の働きかけの変化や反応がその要因と考えられた。新型コロナウィルスの影響に伴い、共同注意の評価指標と有効な働きかけの検証には課題が残った。 先行研究では、共同注意の形成は明らかにされてきたが、重度・重複障害児の指導のあり方に対する具体的な指標が得られず、授業改善につながりにくい課題が示されていた。本研究の成果は、学校現場における教員と重度・重複障害児の共同注意に関する実態を把握する点で、学術的意義を有すると考えられた。また、本研究は重度・重複障害児への授業改善や指導に関する方略だけでなく、重度・重複障害児の共同注意を考慮した環境設定や教材などに活用でき、重度・重複障害児の合理的配慮を提供する際の根拠となる点で、社会的意義を有すると考えられた。
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