2020 Fiscal Year Annual Research Report
同位体標識を用いたフラグメンテーション解析による危険ドラッグ構造推定法の開発
Project/Area Number |
20H00966
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Research Institution | 大阪府警察本部 |
Principal Investigator |
松田 駿太朗 大阪府警察本部, 研究員
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | 危険ドラッグ / フラグメンテーションメカニズム / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
カチノン系危険ドラッグは、化学構造の一部を変化させ次々と流通するため、深刻な社会問題となっている。これらを取り締まるために、構造類似体を正確に識別可能な分析方法が必要不可欠である。これまでに、第一級及び二級アミン構造を有するカチノン類では、衝突誘起解離(CID)によって、カルボニル基の酸素原子及びエレクトロスプレーイオン化(ESI)時に付加したプロトンと共に、アミンの窒素原子に結合する水素原子が水分子として脱離していることが示された。一方、第三級アミン構造を有するカチノン類(α-ピロリジノフェノン類(PPs)等)でも、その代謝物であるカルボニル還元体(1-OH体)及びピロリジン環酸化体(2″-oxo体)においては、いずれもESI-CIDによって脱水イオンが観察される。そこで、PPsの代謝物を対象に、安定同位体標識化合物を用いて脱水時に脱離する水素原子及び酸素原子の特定を試み、その脱水メカニズムについて検討した。 その結果、カルボニル還元体(1-OH-α-PBP)の脱水では、ESI時に付加したプロトンと共に、ヒドロキシ基の水素原子が脱離していることが示された。従って、第三級アミン構造を有するカチノン類は、カチノン骨格を形成するカルボニル基がヒドロキシ基に代謝されることによって、アミノ基の水素原子が非存在下でも脱水反応が進行することが示された。一方、ピロリジン環酸化体(2″-oxo-α-PBP及び2″-oxo-α-PPP)の脱水では、カルボニル基の酸素原子と共に、3か所以上の水素原子(ESI時に付加したプロトン、アルキル鎖2位、3位、フェニル基など由来)が関与することが示され、複数のメカニズムで反応が進行することが明らかになった。 本研究の結果は、脱水のフラグメンテーション機構を示す基礎的な知見になると共に、脱水イオンがカチノン類の構造識別に有用であることを示すものである。
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