2020 Fiscal Year Annual Research Report
乳がん患者の血中パルボシクリブ濃度における個人差の遺伝的要因解析
Project/Area Number |
20H01044
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
小玉 菜央 鳥取大学, 医学部附属病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | パルボシクリブ / 副作用 / 遺伝子多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的:パルボシクリブ(PAL)は、標準内分泌療法単剤投与群と比較して、無増悪生存期間を約2倍も延長することが示された画期的な新規乳がん治療薬である。欧米諸国と同じ用法用量で日本においても使用されているが、PALの血液毒性は日本人で重篤化しやすいことが報告されている。PALは排泄トランスポーターのBCRPの基質であることが報告されており、BCRPをコードしているABCG2遺伝子多型に伴う血中濃度の違いが血液毒性の人種・個人差に関わる可能性がある。そこで、ABCG2遺伝子変異が、血漿中PAL濃度の増加、血液毒性の頻度上昇や重篤度増大に影響しているかについて検討した。なお、本研究は、鳥取大学医学部倫理審査委員会の承認を得て実施した(臨床研究番号:19A114G)。 研究方法:患者血液からゲノムDNAを抽出しTaqMan法を用いてABCG2 c.421C> Aについて遺伝子多型解析を実施した。患者の定常状態の血漿中PAL濃度の測定は、オンライン前処理システムであるカラムスイッチングLC-MS/MS法を用いて実施した。血液毒性の重篤度は有害事象共通用語規準 v5.0日本語訳JCOG版を用いて評価した。 結果:研究に参加した患者6名のうち4名にABCG2 c.421C> A変異が認められ、そのうち2名がヘテロ接合型、2名が変異型であった。定常状態の血漿中PAL濃度は、遺伝子型に関わらず同程度であった。PALを投与された全ての患者でグレード1から3の血液毒性が認められ、治療を継続できた4名のうち3名が血液毒性により一時的な投与中止・投与量の減量を要した。 研究成果: 血漿中PAL濃度には、ABCG2 c.421C> A変異による影響は認められなかった。一方で、ABCG2 c.421C> A変異を有する患者では重篤な血液毒性による投与量の減量タイミングが導入早期で認められたことから副作用の重篤化に影響を与えている可能性も考えられる。今後さらに患者数を増やし検討を進める予定である。
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