2020 Fiscal Year Annual Research Report
せん妄発症に対する活性化アストロサイトの恒常性機能異常の関与
Project/Area Number |
20H01046
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
牛尾 聡一郎 岡山大学, 大学病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | GABA / アストロサイト / せん妄 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】せん妄は、見当識障害に加え幻視・幻覚など精神症状・行動異常を特徴とする状態を示す。せん妄の発現は、基礎疾患への悪影響、死亡率の増加、入院期間の延長、介護・看護者への負担など臨床上大きな問題となる。申請者は、動物モデルを用いた検討から炎症病態時にベンゾジアゼピン(BZ)作動薬の感受性が亢進していること、また BZ作動薬の感受性亢進時には GABAA受容体の発現に変化はなく、神経支持細胞であるグリア細胞の活性化が関与していることを明らかにした。そこで本研究ではグリア細胞上に発現している GABAトランスポーターに着目し、GABA神経の恒常性機能の解析を行った。 【研究方法】ICR 系雄性マウスを用いて、LPS(500 μg/kg, i.p.)投与により全身炎症病態を引き起こした。次にLPS投与24時間後の背側海馬および前頭前皮質のGABA再取り込みトランスポーターmGAT1(SLC6a1)、mGAT4(SLC6a11)のmRNA発現量をreal-time RT-PCR法によって評価を行った。 【研究成果】LPS投与24時間後の前頭前皮質ではmGAT1およびmGAT4のmRNAの発現が低下した。背側海馬のmGAT1については低下傾向が認められれ、mGAT4では有意に低下した。アストロサイト上に特異的に発現しているmGAT4は前頭前皮質および背側海馬のどちらもにおいて顕著な低下が認められた。本検討より、炎症病態時におけるBZ作動薬の感受性亢進には、シナプス間隙中のGABAを取り除く役割を担うGABAトランスポーターの発現低下が関与することが示唆された。今後、炎症病態時におけるBZ作動薬の感受性亢進に対するmGAT4阻害薬の効果を検証することを予定している。
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