2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H01055
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
外島 由梨 東京大学, 医学部附属病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | オラパリブ / 貧血 |
Outline of Annual Research Achievements |
オラパリブはPoly(ADP-ribose)polymerase(PARP)を標的とする分子標的薬であり、breast cancer susceptibility gene(BRCA)1/ BRCA2遺伝子変異陽性の卵巣癌・乳癌に対するkey drugに位置付けられている。しかし、日本人の安全性のデータは少なく、副作用のリスク因子も明らかとなっていない。本研究はオラパリブによる重篤な副作用の発現率と発症に関連するリスク因子を明らかにすることを目的とした。 2018年4月から2021年1月までにプラチナ感受性再発卵巣癌に対してオラパリブを投与した患者を対象に後ろ向き観察研究を実施した。対象患者は32名であり、重篤な副作用としては貧血が最も高頻度であった(37.5%)。また、オラパリブの減量・中止に至った患者は18名であり、その理由としては貧血が最も多かった。そこで、オラパリブによる重篤な貧血のリスク因子を解析したところ、単変量解析では年齢が65歳以上、オラパリブ投与前のクレアチニンクリアランス(Ccr)が80mL/min未満、および再発化学療法時におけるGrade 4の好中球減少症発症歴が抽出されたが、多変量解析の結果、Grade 4の好中球減少症発症歴のみが独立したリスク因子として特定された。また、本研究では貧血の他、軽度の血清クレアチニン値上昇も高頻度に認められた(53.1%)。これは、オラパリブによる尿細管上皮細胞のMultidrug and toxin extrusion protein 1(MATE1)阻害によるものと考えられた。 オラパリブは体内動態に腎臓が一部寄与していること、単変量解析ではCcrが重篤な貧血のリスク因子として抽出されたことから、今後は残検体を利用してオラパリブの血中濃度を測定し、血中濃度と貧血、腎機能、副作用の関連を検証する予定である。
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