2020 Fiscal Year Annual Research Report
造血幹細胞移植患者における血中レテルモビル濃度に影響を及ぼす個体間変動因子の探索
Project/Area Number |
20H01067
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
森山 侑太 筑波大学, 附属病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | レテルモビル / 造血幹細胞移植 / 治療薬物モニタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的:レテルモビル(LTV)は造血幹細胞移植後のサイトメガロウイルス感染症の発症を抑制する抗ウイルス薬である。LTVは点滴・内服の投与経路にかかわらず480mgを1日1回投与する薬であるが、バイオアベイラビリティ(BA)は健康成人が約94%であるのに対し造血幹細胞移植後の患者のそれは約35%と低い。そのため、造血幹細胞移植後の患者にLTVを内服投与した場合には、得られる血中濃度は低くなることが予想される。この理由として胃腸粘膜障害及び移植片対宿主病の関与が示唆されているものの、BAが低下してしまう原因は不明である。また、このBAの低下により造血幹細胞移植患者におけるタクロリムス(TAC)との薬物相互作用強度は、健康成人を対象した臨床試験の結果とは異なる可能性がある。そこで本研究は、造血幹細胞移植患者におけるLTVとTACの薬物相互作用強度に影響を及ぼす変動因子を探索することを目的とした。 研究方法:造血幹細胞移植患者においてLTVとTACを併用した患者を対象とした。対象患者のうち、TACを投与中にLTVを経口投与にて併用開始もしくは中止した患者3名において、LTV併用・中止前後の血中TAC濃度および血中TAC濃度/投与量比を後方視的に評価した。 研究成果:LTVとTACの併用では、両剤を経口投与により併用開始および中止した症例においては血中TAC濃度/投与量比の変動を認めたが、TACを点滴投与中にLTVを併用開始および中止した症例では明らかな変動が認められなかった。このことから、造血幹細胞移植患者においても経口でのLTVとTACの併用により薬物相互作用を起こすことが確認された。また、その薬物相互作用はTACの投与経路により強度が異なることから、消化管内におけるLTVのTAC代謝阻害に起因することが示唆された。
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