2020 Fiscal Year Annual Research Report
虚弱高齢者を対象とした吸気筋トレーニングが咳嗽力向上に与える影響
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20H01145
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
森下 辰也 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 社会人大学院生(本務:理学療法士)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | 虚弱高齢者 / 咳嗽力 / 吸気筋トレーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
研究背景:高齢者の肺炎発症には自力排痰困難が関連しており,中でも咳嗽による自力排痰が困難なものが多く存在する.咳嗽力には吸気筋力が関与しているが加齢に伴い低下し,虚弱高齢者では更なる低下を認める.その強化として吸気筋トレーニング(IMT)が適応されるが,咳嗽力に与える影響は不明である. 研究目的:虚弱高齢者に対する吸気筋トレーニングが咳嗽力に与える影響を明らかにすること. 研究方法:研究デザインはランダム化単盲検並行群間比較試験であり,対象は65歳以上の高齢者かつFrailの基準によりフレイル,プレフレイルに該当するものとした.対象をランダムに介入,非介入群の2群に分類し,介入群は通常のリハビリに加え吸気筋トレーニング機器を用いた吸気筋トレーニングを実施した.介入期間は8週間とし,強度は最大吸気口腔内圧の30%,頻度は1日30呼吸を2回,毎日の実施とした.主要評価項目は介入後の咳嗽時最大呼気流量であり副次評価項目は介入後の呼吸機能,呼吸筋力,身体機能とした. 研究成果:対象は介入群9例(平均年齢80.9±7.8歳,男性3例),非介入群9例(平均年齢84.7±2.4歳,男性2例)であり,介入群において1例介入中の脱落を認めた.介入群では咳嗽時最大呼気流量が改善傾向であり,呼吸筋力,舌圧が統計学的に有意な改善を認めたが,非介入群においては全ての項目で有意な改善は認められなかった.その他の呼吸機能や身体機能においては介入群,非介入群ともに有意な変化は認められなかった.虚弱高齢者に対する8週間のIMTは咳嗽力のみならず呼吸筋力,摂食嚥下機能の改善効果を認め,高齢者肺炎の予防のための新たなる介入戦略になることが期待される.
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