2020 Fiscal Year Annual Research Report
海の基礎生産力に応じた環境自立型養殖技術の最適化手法の構築
Project/Area Number |
20H01172
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
丸尾 知佳子 東北大学, 工学研究科, 技術専門職員
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | 基礎生産 / 二枚貝 / 沿岸域 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の東北・北海道沿岸域では,ホタテや牡蠣など貝類の養殖が盛んであり,海水面養殖業の総生産量のうち約40%を占める重要な産業である.貝類の養殖は,餌を与えずに海で生産される天然プランクトンの生産(基礎生産)に依存しており,海の基礎生産力を超えない範囲で養殖を管理する必要がある.そこで,持続可能な養殖のために,海の基礎生産力を適切に評価することが求められている.現在,宮城県沿岸地域における牡蠣養殖では,東日本大震災前と比較してイカダを1/3に減らし,養殖量を管理している.結果,震災前は5~6年かけて育つサイズに1年で育つことが知られている.そこで,国内有数のホタテ養殖地である青森県陸奥湾において,海の基礎生産量を測定し,適正な養殖量管理の基礎となるデータを得ることを目的とした. 本研究では,2020年11月,2021年2月,5月,8月)に陸奥湾内養殖地域4地点において,海水を採取した.各地点につき表層を含めた3層(相対照度100%,70%,40%)についてバンドーン採水器を用いて海水を採取した.採取後の海水は冷暗保存により実験室へ持ち帰り,炭素安定同位体標識化法により植物プランクトンの基礎生産量を測定した.培養は海水採取時の水温と同じ温度に設定した培養器の中で,24時間継続した.光条件はNEDO日射量データベースの月別平均値を用いて季節ごとに設定した.結果,11月に最大の基礎生産量が測定されたが,8月は基礎生産量を呼吸量が上回り,マイナスの結果となった.11月は稚貝のカゴ換えの時期と重なり,ホタテの摂餌量が増加するタイミングであるため,この時期の基礎生産量を基にカゴに入れる稚貝の枚数を管理し,冬季の成長を促すことが重要であることが明らかとなった. 本研究で得られた基礎生産力を元に養殖量の最適化の指標となる基礎データを構築することが可能となった.
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