2020 Fiscal Year Annual Research Report
Meaning of Life and the Metaphysics of Death: the Possibilities of Analytic Existentialism and a Critical Examination of it
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20H01175
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藏田 伸雄 北海道大学, 文学研究院, 教授 (50303714)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森岡 正博 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (80192780)
村山 達也 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50596161)
久木田 水生 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (10648869)
古田 徹也 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (00710394)
鈴木 生郎 日本大学, 文理学部, 准教授 (40771473)
八重樫 徹 広島工業大学, 工学部, 准教授 (20748884)
吉沢 文武 秋田大学, 高等教育グローバルセンター, 講師 (20769715)
杉本 俊介 大阪経済大学, 経営学部, 准教授 (80755819)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 人生の意味 / 分析実存主義 / 死の形而上学 / 反出生主義 / 自由意志 / 応用倫理学 / 自己 / 疎外 |
Outline of Annual Research Achievements |
「分析実存主義」の分野における重要なトピックである「人生の意味」等の概念についての研究と、死者の存在や「死の害」について扱う「死の形而上学」、さらに「反出生主義」についての議論の三者を視野に収める研究を行うことを試み、その関連を明らかにすることを目標とした。特に森岡と吉沢が反出生主義研究の成果を海外のジャーナル等に発表した。また2021年(令和3年)度には「人生の意味」に関する議論と「自由意志」に関する分析哲学的な議論との接続を試みた。自由かつ自律的な生は充実した善き生であるのに対し、自由意志を否定する決定論的な世界観のもとでの生は「意味のない生」だと考えられがちである。このような自由意志論と人生の意味との関連については、D.Pereboomによる先行研究があるが、本年度はこの問題について研究協力者の山口尚を中心にして分析を行った。また死の形而上学について考える上では、個人のナラティブと自己概念との関連についての哲学的研究を必要とするが、この問題について鈴木が検討を行った。また八重樫が「生きる意味」とペシミズムとの関連を現象学的な観点から分析した。また「AIにとっとて倫理とはどのようなものか」といった問題について、2021年度は久木田がこの問題に取り組んだ。また人生の意味と疎外との関連について、長門が社会哲学的な観点から研究を進めた。また本研究と生命倫理との接続を試み、藏田がコロナ禍における生き方について分析した。現代の分析実存主義ではウィトゲンシュタインがその嚆矢とされることが多いが、古田が「意志」との関連でウィトゲンシュタインにおける生の意味の位置づけを明らかにした。また村山が「愛」と欲求に関係について検討し、「人生の意味」という概念の成立について歴史的な観点から検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度はコロナ禍もあって対面での研究会は実施できなかったが、研究代表者が運営委員の一人として関連する内容の国際会議をバーミンガム大学主催でオンラインで開催し、研究分担者の数名が発表した。2021年度はオンラインでの研究会を計3回開催し、また対面での研究会も一回実施することによって、研究分担者間の研究成果を共有することができた。また日本哲学会などの学会や、その他のシンポジウムでも、各研究分担者がその成果を明らかにすることができた。特に反出生主義、自由意志、自己、欲求と自己、AI倫理との関連、疎外、幸福、感情、ペシミズムといったトピックについては予想以上に研究が進展した。森岡と吉沢、鈴木、山口の研究により、反出生主義に伴うテクニカルな問題について、緻密な分析を行うことができ、森岡と吉沢はその成果を英語で公開している。また八重樫によって進められているり現象学的な観点からのペシミズム分析は、この問題について分析するためのフレームワークとなっている。また村山と鈴木に進められている欲求や自己との関連についての分析も、順調に進んでいる。特に村山の研究により、「人生の意味」という概念とその問題圏が成立した歴史的経緯について明らかにされた。「人生の意味」という概念には家族的類似性が成立するだけで、それについての統一的な問題圏はないとされることもあるが、「意味」が認識と関連する概念であることが明らかにされたことにより、本研究全体を統一的な視野のもとで検討する道筋が示された。「人生の意味」について検討を進めるための手法と、扱うべき問題について明確化されたことで、次年度に向けての研究を進める基盤を構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今までの研究を通じて、「人生の意味」と関連する様々な問題圏(自由意志、反出生主義、ペシミズム、仕事の意味、疎外、自己、欲求等)に関する様々な議論の全体像を明らかにすることができた。特に「人生の意味」という概念についての歴史的経緯が明らかにされたことの意義は大きい。 今後は今までの研究成果を踏まえて、これらの問題について改めて検討する。特に「人生の意味」が感じられない、ということはある種の疎外の状態だと考えることができ、20世紀の疎外概念を捉え直すことを試みる。さらに「人生の意味」に関する議論の多くは、男性健常者の視点からなされているため、フェミニズムや障害論、差別論といった観点から議論の構造自体を問いなおす必要がある。また幸福、道徳とは異なる、「人生の意味」の「第3の意味」は、本研究の中で重要な問題の一つであるが、本研究班でも十分な検討がなされていないので、本年度はそれについて研究する。また反出生主義の基礎にあるのはペシミズムであるが、世界観としてのペシミズムが19世紀から20世紀にかけて持っていた意味についても検討する。さらに、今年度は徳と幸福という観点から、「人生の意味」についての議論と徳倫理学との関連について検討する。次年度に向けて研究成果のとりまとめを行うが、それに向けて成果の共有と検討を行う。
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Research Products
(23 results)