2020 Fiscal Year Annual Research Report
Bassoon proteinopathyの病態解析研究
Project/Area Number |
20H03585
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
矢部 一郎 北海道大学, 医学研究院, 教授 (60372273)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 太一 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (00392374)
矢口 裕章 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (00421975)
池内 健 新潟大学, 脳研究所, 教授 (20372469)
高橋 秀尚 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (30423544)
大塚 稔久 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (40401806)
若林 孝一 弘前大学, 医学研究科, 教授 (50240768)
畠山 鎮次 北海道大学, 医学研究院, 教授 (70294973)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Bassoon / 神経変性 / 認知症 / パーキンソニズム / モデル動物 / 多発性硬化症 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
われわれは先行研究において、一部のタウオパチー発症に神経終末アクティブゾーンに存在するbassoon蛋白を翻訳するbassoon(BSN)遺伝子の変化を見出した。そのタウオパチーは3リピート(3R)と4リピート(4R)のタウ蛋白質が蓄積する新しい病態であることも示した。さらに、今までPSPと臨床診断していた患者を対象に遺伝子解析を実施したところ、その約10%にBSN遺伝子変化を同定した。このメカニズムとして分子生物学的手法を用いて、BSN遺伝子変異がタウタンパク質を不溶性分画に移行させる病原性があることを解明した。その結果、われわれの論文を引用し、Bassoon proteinopathyという疾患概念が提唱され、BSNタンパク質やBSN遺伝子と多発性硬化症、ハンチントン病、若年性パーキンソン病などの重要な神経疾患との関連が近年相次いで報告されている(Montenegro-Venegas C, et al. Autophagy 2020, Huang TT, et al. Acta Neuropathol Commun 2020, Hoffmann-Conaway S et al. Elife 2020)。当教室では現在このBSN遺伝子変化のPSPを始めとする神経難病への関与についてさらに検討を進めている。具体的には今回の研究では、①モデル動物と細胞株においてBSN遺伝子変異がタウオパチーを惹起する病態機序と同変異が治療標的となり得る可能性、②過去の研究報告からBSNが病態に関与している可能性がある認知症関連疾患、パーキンソン症候群、多系統萎縮症、多発性硬化症などの多様な神経疾患におけるBSN遺伝子変異関与の可能性、③血漿や髄液検体を用いてBSNタンパク質を測定し、BSNタンパク質量が診断および重症度バイオマーカーになり得る可能性、の3課題を中心に研究を遂行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はすでに共同研究体制が整っている。現在申請者は、先行報告を踏まえた上で、共同研究者である新潟大学 池内健教授が代表を務める日本におけるPSPおよび大脳皮質基底核変性症(Corticobasal degeneration; CBD)のバイオマーカー縦断研究において集積された検体を基盤として大規模な遺伝子解析研究を多施設共同研究として実施中である。現時点で258症例の解析が終了し、約11%の症例に25種類のBSN遺伝子レアバリアントを見出し(未公開データ)、そのうち4症例は剖検例であり病理学的解析も進めている。申請者はかねてから神経疾患バイオバンクを運営しており、多数のDNA試料を保有している。倫理委員会承認の下、それらを用いて他疾患においてもBSN遺伝子解析を現在進捗させている。現時点で多系統萎縮症94例中15例に10種、先行研究以降に蓄積したPSP 58例中4例に3種のレアバリアントを見出している(未公開データ)。また多発性硬化症における解析では、既に95例中21例において16種類のレアバリアントが認められており、その中には申請者が家族射性PSPにおいて報告した P3866Aも確認されている(未公開データ)。今後はさらなる症例収集と遺伝子解析を行い、臨床的解析と見出されたレアバリアントの病原性について検討を進める予定である。またこれまでにも北海道大学基礎医学研究室と学外研究室(山梨大学、横浜市立大学)との共同研究実績があり、これまでと同様に共同研究の継続と技術的支援を受けることが可能であり、研究を円滑に遂行できる体制が整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)不死化細胞株における分子生物学的検討。BSN遺伝子変異の病原性を証明するために、タウ蛋白質との関連性を評価する必要がある。申請者は先行研究で病原性を評価する細胞培養系を作成した。現在、不溶化とリン酸化のどちらが主たる変化であるかについて検討中であるが、ユビキチン化やオートファジーに関しても、生化学的解析によりモデルマウス脳とコントロールマウス脳を用い比較検討する。 2)モデル動物(ノックインマウス)を使用した解析。申請者が見出した遺伝子変異をCRISPR/Cas9を用いたゲノム編集技術により導入したノックインマウスを作成中であるが、そのマウスの表現型や神経病理所見を解析する。加えて核酸投与によるBSNや関連タンパク質ノックダウンにより、治療標的となり得る可能性を探索する。 3)BSNが発症に関与している可能性がある神経疾患である認知症関連疾患、パーキンソン症候群、多系統萎縮症および多発性硬化症におけるBSN遺伝子変異の関与を検討する。 進行型多発性硬化症や多系統萎縮症の神経変性病態においてBSN発現増加が認められることが報告されている。このことはBSN遺伝子変異が神経変性における重要な指標である可能性を示唆している。それを踏まえて、さらなる症例収集と遺伝子解析を行い、臨床的解析と見出されたレアバリアントの病原性について検討を進める予定である。 4)血漿や髄液検体を用いてBSNタンパク質を測定し、BSN蛋白質量が診断および重症度バイオマーカーになりえるかどうかについて検討する。申請者らは先行研究後もBSN rare variantを有する症例の血漿や髄液検体の蓄積に務めてきた。それらを対象として、超高感度イムノアッセイシステムを使用し、BSNタンパク質や関連候補物質を定量的に測定し、診断バイオマーカーあるいは重症度を反映するバイオマーカーとしての可能性について検討する。
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Research Products
(1 results)