2021 Fiscal Year Annual Research Report
Highly efficient establishment of lung cancer patient-derived organoids and its application for prediction of sensitivities to various treatments
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20H03773
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
光冨 徹哉 近畿大学, 医学部, 教授 (70209807)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肺がん / オルガノイド / 継代 / 抗癌剤感受性検査 / ドライバー遺伝子変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究開始後計79検体の肺癌切除検体から56例の肺がんオルガノイド(LCO)を樹立した。その内訳と成功率は腺癌37例/49例(76%)、扁平上皮癌12例/22例(55%)、小細胞肺癌3例/3例(100%)、混合型小細胞肺癌2例/2例(100%)、その他2例/2例(100%)と扁平上皮癌で低い傾向であった。10継代以上の培養が可能であったのは9例のみであった。 原発巣とLCOの病理学的所見の比較では、組織所見ならびに腺癌のTTF-1、扁平上皮癌のp40、小細胞肺癌の神経内分泌マーカーの発現、さらには蛍光免疫染色により組織構造や細胞の極性も概ね類似していることを確認した。またLCOを免疫不全マウスに移植して樹立したxenograftにおいても、腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌のいずれも原発巣ならびにLCOとで組織所見や免疫染色所見は類似していた。一方、次世代シーケンサーを用いて原発巣とLCOの遺伝子変異ならびにコピー数変化の詳細に比較したところ、EGFR変異等のドライバー遺伝子は高率に保存されていたものの、一部の遺伝子変異は原発巣とLCOで一致ないものが散見され、コピー数の一致率も症例によって程度に差が認められた。さらにサンガーシーケンス法でその他の腺癌LCOのEGFR遺伝子変異を確認したが、一部では変異が消失していた。これはLCOの樹立において問題視されている正常気管支上皮のexpansionによるものと考えられ、現行腫瘍組織に対しては正常肺組織培養用と異なる培養メディウムを使用しているものの、更なる工夫の必要性が示唆された。 臨床応用やバオイオバンクとしての機能を満たすには凍結保存と解凍後も培養が可能となることが重要であるが、凍結・融解試験において一度マイナス80℃に保存した検体のうち15例を再培養したものの、良好に発育したのは5例のみであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度よりさらに症例を重ね、樹立したLTOに関してより詳細な病理ならびに免疫組織学的検討や遺伝子学的検討を行い、さらに統計学的な評価も加えることで、上記の通り新たな知見や問題点を見出すことができた。LCOのマウスへの移植により新たな異種移植モデルの樹立にも成功し、前臨床モデルとしてのさらなる汎用性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで-80℃のディープフリーザーでLCOの凍結保存を行なっていたが、凍結・融解後のviabilityの低下が問題であり、現在液体窒素を使用するなど凍結保存方法を変更することでその改善がみられるか検討中である。樹立手法、中でも培養用のメディウムに関して、腺癌や小細胞肺癌では高い樹立率が得られているものの、扁平上皮癌に対しては使用する薬剤の組成を再度検討したい。また上記の通り肺癌に対しては正常肺組織培養用と異なる培養メディウムを使用しているものの、とくに腺癌において正常気管支上皮のコンタミネーションが問題であり、腫瘍細胞との選別の方法について更なる工夫が必要と考える。当科ではCOVID-19パンデミック後も年間160例以上の肺癌症例を有しており、今後もLCOの培養方法ならびに凍結保存方法の条件検討・比較を継続する。さらに可能であれば生検検体をもちいたLCO樹立も試みたい。
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