2020 Fiscal Year Annual Research Report
性的虐待被害者にとって生とは何か――当事者研究の角度から
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20J12138
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井上 瞳 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 性暴力 / 性的虐待 / 当事者 / 被害者 / PTSD / ジェンダー / エスノグラフィー / 現象学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、新型コロナウィルスの影響で新たなインタビュー調査およびフィールドワークが困難となったため、まず、本研究に関係する国内外の研究動向の把握を行った。これまでの理論的研究成果の公開を目的として、10月には大阪大学人間科学研究科未来共創センター機関誌『未来共創』に論文投稿を行った。本論文では、特に1980年代以降アメリカで発展したPTSDをめぐる議論を「トラウマのPTSDモデル」と定義したうえで、日本の性暴力被害者ケアと回復をめぐる言説を、新自由主義とポストフェミニズムという現代の社会状況の観点から分析を試みた。本論文は『未来共創』第8号に掲載されることとなった。 12月には、現象学的手法で語りを分析する「臨床実践の現象学会」の研究会にて発表を行った。本調査により、PTSDやトラウマケアといったグローバルな治療・支援モデルが、従来その周縁領域とされてきた学校、家庭、職場といった日本のローカルな生活世界になかに位置づけられたとき、かえって学校や職場への行きづらさという別種の困難をもたらしうることが明らかとなった。 3月には、性暴力被害当事者が自分で自分を語る場の実現を目的に、「多様化する嗜癖・嗜虐行動からの回復を支援するネットワーク(ATA-net)」および一般社団法人「もふもふネット」サポートのもと、「箱を飛び出せ――性被害当事者との対話」というイベントを企画した。本イベントでは、企画立案から当事者と協同で行った。性被害者という属性による語りの期待から自由になる環境づくりに焦点をあて、(1)当事者各人の発表時間を作ること、(2)研究者側が発表形式を規定しないことの2点を柱に据えた。その結果、当事者が被害者支援をどのように経験しているのか、そして、生活という社会・文化的次元においてトラウマを軸とする心理回復モデルをどのように経験しているのかという主題に焦点を当てることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、新型コロナウィルス感染症の影響により対面でのインタビュー調査、参与観察が実施できなくなる事態が生じた。そうした状況において、性暴力被害後を生きるとはどのようなことかという本研究課題の基本方針のもと、まずは国内外の研究動向の把握とそれにもとづく論文執筆、研究会での発表をつうじた本研究の基盤を形成した。そのうえで、当事者と協同でイベントを企画し、実施することができた。その点では、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の当初計画では、対面によるインタビュー調査および参与観察を実施する予定であった。しかし、それら対面での調査は、新型コロナウィルス感染症の流行の影響により、実施が困難になることが予想される。その場合は、オンラインによるインタビュー調査やインターネットを通じた情報分析、およびこれまでに収集した文献分析に移行するなどして対応を試みる。 本研究の2年度目にあたる2020年度以降は、学会での研究発表、論文、イベントの実施をつうじ、研究成果の公開にもより積極的に取り組んでゆく
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Remarks |
社会貢献活動として以下のイベントがある。 多様化する嗜癖・嗜虐行動からの回復を支援するネットワーク(ATA-net)主催、一般社団法人もふもふネット共催、「性被害当事者との対話――箱を飛び出せ」、2021年3月6日、企画立案・コメンテーター・出演。
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Research Products
(2 results)