2023 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive Study on Chinese Painting Titles in Japanese Medieval Culture
Project/Area Number |
20K00306
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中本 大 立命館大学, 文学部, 教授 (70273555)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 五山文学 / 常信縮図 / 室町時代水墨画 / 漢画系画題 / 扇市 / 陸游 / 蘇軾 / 東坡笠屐図 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍で研究計画の見直しを余儀なくされ、一年間の研究期間延長を申請せざるを得なかったものの、最終年度である2023年度、ほぼ予定通りの研究課題を遂行できたと考えている。最大の成果は、東京文化財研究所に所蔵される、河野元昭氏が代表を務められた1998年度から2001年度におよぶ科研費研究課題「探幽縮図の総合的研究」(基盤研究A 課題番号10301004)で撮影された「常信縮図」写真版の全画題分析を実施、終了したことである。画題分析は「故事・人物図」、とくに漢画系人物画題について重点的かつ詳細に行い、その結果を一覧データ化した。今後は分析したデータに基づく特長的な個別画題の研究を継続的に進める予定である。 個別画題の分析については、2023年度、室町時代中期の文明年間、相国寺の学僧・彦龍周興の周辺で受容された中国宋代の文物に関わる詩題および画題の研究を遂行した。具体的には「扇市」という中国唐代、長安の都市文化を代表する年中行事が、典拠である歳時記の記載を源泉に、扇を愛好した中国南宋の詩人、陸游のイメージをかたちづくる端緒となり、日本における新たな陸游像の展開をもたらす契機ともなり得たこと、それだけでなく日本における陸游詩のテキスト受容に関する示唆を与えたことにも考察を及ぼした。まさに「画題」への注目が、日本文学史への知見を深め、これまで掘り起こされていなかった文化的事象や詩題の周知につながる典型例を提示できたと考えている。 さらには本邦禅林において最も敬愛された文人である「蘇軾」の人物像を探るべく、その晩年、蘇軾の近くにおって彼を支え続けた愛妾・朝雲との関係に注目し、本邦五山僧が蘇軾の為人をどのように理解しようと努めたのか、という視点での研究を進めた。この研究の端緒となったのが「東坡笠屐図」という画題である。これらの成果は2024年度以降に活字化される予定である。
|
Research Products
(2 results)