2020 Fiscal Year Research-status Report
上代特殊仮名遣いを区別した『万葉集』の複数テキスト構築とその統計学的研究
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20K00329
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
村田 右富実 関西大学, 文学部, 教授 (30244619)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 上代文学 / 万葉集 / 統計 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度はコロナ禍の一年であった。予定していた学会や研究会が悉く中止となり、研究にも大きな支障が出た。研究は個人のものではなく、他者との相互映発の中で生まれてくると実感した年であった。そうした中で、実質的には前年度の研究内容の公表ではあるが、「記紀の韻文のかたどられ方」(全国大学国語国文学会『文学・語学』228号2020年4月)は、『古事記』、『日本書紀』における韻文の導かれ方に着目した研究結果であり、上代韻文と上代漢文(通称としての変体漢文を含む)との差異を明確にした。 また、専門雑誌に掲載したものではないが、「『日本書紀』まで」(学士会『学士会報』942号2020年5月)は、『日本書紀』完成までの道程をわかりやすく記し、研究結果の還元に寄与できたと考えている。 また、「境部老麻呂の三香原新都讃歌」(大阪府立大学『百舌鳥国文』30号2021年3月)では、遷居直後の恭仁京の実態を『続日本紀』から探り、境部老麻呂の讃歌との共通性と差異とを見出しながら、万葉集第4期において一般の高級官僚がどのような詠作をなしていたかを論じた。これまで等閑視されていた、恭仁京の状況と歌表現とのつながりを論じたものである。 なお、刊行時期の関係で2021年度の研究業績になるが、「天平十三年の書持と家持との贈答について(一)―本文校訂について―」(関西大学『東西学術研究所紀要』54号2021年4月)、上野誠・鉄野昌弘・村田右富実編著『万葉集の基礎知識』(角川書店2021年4月)がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の流行拡大の影響を受け、大学に入構できない時期があり、その後も、予定していた学生・院生のアルバイトを手配できない状況が続いた。そのため、入力していたテキストの校正がまったくできない状況に陥った。 また、学会・研究会のほとんどが中止となり、学術上の意見交換等がまったくできない状況が続いた。 上記2点により、研究の進捗は遅れているといわざるを得ないが、2点目についていえば、zoomなどの利用により、着実に回復してきているといえよう。 2021年度に入り、アルバイトの確保まではしたが、3度目の緊急事態宣言で先行きが見えない状態である。 ただし、個人で行っている研究は、新型コロナウイルス感染症の流行の結果、時間を取ることができるようになった面もあり、想定以上に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、新型コロナウイルス感染症の流行拡大が収束に向かうことを前提にしてよいのであれば、今年度大学院に入学した院生やゼミの学生をアルバイトとして確保し、昨年度の遅れを取り戻したい。しかし、5月7日に緊急事態宣言の延長が決定され、アルバイト雇用もこの先、滞ることが想定される。アルバイトの自宅勤務も含めた計画を考えざるを得ないだろう。 夏休みの頃に落ち着いているようであれば、合宿開催などによって遅れを取り戻したい。 こうした方向とは別に、一人でできる研究は着実に進んでいる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行拡大に起因する、研究会・学会の中止、あるいはオンライン開催によって予定していた出張ができなかったこと、また、同じ理由によって予定していたアルバイト雇用がまったくできずに終わったため。 2021年度、新型コロナウイルス感染症の流行が収束に向かえば、昨年度分も含めて、アルバイト雇用を積極的に行い、遅れを取り戻す予定である。
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Research Products
(3 results)