2021 Fiscal Year Research-status Report
上代特殊仮名遣いを区別した『万葉集』の複数テキスト構築とその統計学的研究
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20K00329
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
村田 右富実 関西大学, 文学部, 教授 (30244619)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 万葉集 / 上代特殊仮名遣い / テキストファイル |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年に始まった全世界的な新型コロナウイルス感染症の流行拡大の影響を受け、思うように研究を進めることができずにいる。特に校正のために学生のアルバイトを積極的に雇用できない状況が続き、テキストファイルの入力は進められても、その内容の精度をあげられずにいるのが現況である。 一方、鶴久氏・森山隆氏『万葉集』(おうふう)の特殊仮名遣いの区別は既に終了しており、実用的な段階に入って来ている。また、当初から特殊仮名遣いの区別がされている井手至氏・毛利正守氏『新校注 万葉集』(和泉書院)のテキストファイル化はほぼ終了しており、最終的な校正を施す段階にまでなった。 こうした状況下ではあるものの、zoomやteamsを用いたオンラインによる研究会や研究打合せの開催が軌道に乗り、村田右富実・川野秀一・吉岡剛平「音節に基づいた潜在的ディリクレ配分法による万葉短歌の分類」(『美夫君志』103号・2021年10月)を公表できたのは大きな成果であった。コーパスを基にした潜在的ディリクレ配分法(Latent Dirichlet Allocation 以下、LDA)を、あえてコーパスを使用せずに音韻レベルで適用し、解析した結果は、意味を捨象した解析でありながら、「恋ふ」という表現を持つ恋歌と、「思ふ」という表現を持つ恋歌とが截然と区別されるというものであった。恋歌の分類としては、今までの研究では見えてこなかったものであり、今後の発展が期待されるところである。 また、発表した個別の論文にも表立ってではないが、作成済みまた作成中のファイルは随所に利用されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の最も重要な点は堅牢なテキストファイル構築にあり、そのためには、校正が最も必要な作業となる。その校正は、業者に頼めるような内容ではなく、院生やゼミ生などの学生諸氏のアルバイトに頼るしかないのであるが、大学の研究室への学生たちの出入りもままならない状態が続いており、この点において、研究が進んでいるとは言いがたい。 しかし、2022年度に入り、学生のアルバイトの手配も少しずつ可能になりつつあり、今後遅れを取り戻せる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の流行の経過次第のところがあることは否めないものの、夏期休暇期間を利用して、集中的に校正作業を行う予定である。また、現時点で使用可能なテキストファイルを利用して研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行拡大により、予定通り院生のアルバイトの雇用ができず、また、予定の出張を組み込めなかったため、次年度への繰り越しが発生した。 次年度は、夏期休暇中の集中的な校正作業に発生するアルバイト代と、校正用の新たなPC購入、及び、学会発表の旅費として使用する計画である。
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Research Products
(7 results)