2021 Fiscal Year Research-status Report
Canonization and political order of South-west France in the High Middle Ages
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20K01068
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
小野 賢一 愛知大学, 文学部, 教授 (30739678)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヨーロッパ中世史 / 西洋中世史 / 列聖 / 聖俗権力 / 聖人伝 / 修道院 / 国制 / 教会史 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の伊集院利明教授企画運営の愛知大学人文社会学研究所のオンラインシンポジウム「「幸福」を考える:東洋、西洋、実証研究」に於いて、古代ギリシア哲学者、中国哲学者、社会学者、心理学者とともに研究発表及びディスカッションを行ったが、本年はその成果を総括した。愛知大学人文社会学研究所研究報告論文集所収の拙論「西欧中世の幸福:『聖レオナール伝』にみる至福の人」がその成果物である。南西フランスの11世紀初頭の列聖(聖人認定)のための列聖申請のための聖人伝の形式とその機能の一端が明らかになった。感染症の流行のため在外研究ができない状況下で、カンタベリ大司教トマス・ベケットの列聖プロセスの調査の遂行に不可欠な「聖人伝」「列聖プロパガンダ文書」「列聖請願書」「列聖調査依頼文書」「列聖教書」などの列聖関連文書の所在を探索し、可能な限り入手することに努めた。Acta Sanctorumに当該伝記が所収されていない現状克服のためBibliotheca Hagiographica Latinaやトマス史料集成で各文書を時系列に分類し、その相互連関について解析作業を推進した。その成果報告「12 世紀のカンタベリ大司教トマス・ベケット殺害事件と列聖」を行った。近年の複合国家論、フロンティアヒストリー、紛争解決史などの国制史の最新研究成果を教会史に導入し、プランタジネット朝のヘンリ2世の贖罪をグローバルヒストリーの中に位置づけ、聖俗のコミュニケーションの結節点と捉える視点を打ち出した成果報告「12 世紀の貴族の反乱と暴君ヘンリ 2 世の贖罪」を行った。列聖プロセスを各段階ごとに詳細に分析するというアプローチを導入するとともに、後年、証人審問調査を踏まえて枢機卿会議を経るという中世列聖手続きの完成形態へのプロセスのなかに位置づけることを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この研究課題を申請した令和2年11月の段階においては、想像もできなかった感染症の流行に直面し、研究がやや遅れてしまった。バチカン図書館、列聖省、教皇庁立グレゴリアーナ大学、ウルバニアーナ大学、フランス国立図書館ミッテラン館、リシュリュー館、オートヴィエンヌ県文書館、リモージュ図書館などへの在外研究の予定も全て延期となった。また国内の研究機関でも、現地でしか閲覧することのできない文献の場合、学外者の入庫が禁じられていると閲覧することができず、研究の進行は妨げられた。幸い「列聖請願書」「列聖教書」「列聖プロパガンダ文書」「列聖申請書」などは、どうにか入手することができたが、「列聖調査依頼文書」などを含むいくつかの重要な文献は、この理由により調査できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現状では、かなり厳しいが、バチカン図書館、列聖省、教皇庁立グレゴリアーナ大学、ウルバニアーナ大学、フランス国立図書館ミッテラン館、リシュリュー館、オートヴィエンヌ県文書館、リモージュ図書館などで史資料の調査・収集・解析を遂行するために在外研究を行いたい。またサンス、ポワティエの各司教座など、列聖プロセスにおける「列聖プロパガンダ文書」の受信と生成にかかわる重要な拠点への在外研究も計画中である。また11~12世紀の西南フランスの列聖(聖人認定)のケーススタディーとして、サン・レオナール参事会教会及びグランモン修道会とオーレイユ律修参事会の遺構の調査を予定しているが、不可能な場合、国内の研究機関が、外部の研究者による閲覧を認める時期に、これまでの調査で抜け落ちてしまった「列聖調査依頼文書」などを含むいくつかの重要な文献の調査収集に努めたい。研究開始以降、感染症の流行のため延期となっていた藤女子大学キリスト教文化研究所例会で開催予定の例会報告については、夏季休暇以降に、当初の予定であった研究代表者単独の列聖を贖罪と国制の側面から捉えた報告に加えて共同研究者の報告も行うことが決定された。ウルリッヒ列聖からアレクサンデル3世期の列聖教書を経てグレゴリウス9世教令集で教会法的に中世列聖システムは確立したとされるがウルバヌス8世期まで辿ると現実には段階的であることが明確になった。こうした問題点を踏まえ教会法の観点に加えて国制の観点から具体的かつ詳細な状況を解明していく研究推進方策が確認された。この方針の下で列聖に関するラテン語原典史料の解析作業を行い、その成果報告を行うことが同研究所の会議で正式に決定された。また同研究所の例会報告では聖書編纂などに一家言を有する聖書学の専門家の臨席も予定されているため、ディスカッションで本研究の推進に有意義な貴重な教示を受けることができるものと思われる。
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Causes of Carryover |
札幌の藤女子大学キリスト教文化研究所での例会報告や国内研究機関への文献の調査収集が、感染症の流行により延期となった。またバチカン図書館、列聖省、教皇庁立グレゴリアーナ大学、ウルバニアーナ大学、フランス国立図書館ミッテラン館、リシュリュー館、オートヴィエンヌ県文書館、リモージュ図書館などへの在外研究も延期せざるを得なかったため、使用残額が生じた。本年度は、本研究課題の開始以来、一度も遂行することのできなかった在外研究を遂行したい。またその際には教皇庁列聖請願人の資格を有する共同研究者を同行させることにより当初予定よりも深く迅速に調査を行うことができるよう計画を立て直した。
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Research Products
(4 results)