2021 Fiscal Year Research-status Report
Reconstruction of the solar radiation with a high spatial and temporal resolution based on weather descriptions in historical diaries during the Edo era
Project/Area Number |
20K01152
|
Research Institution | 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(機構本部施設等) |
Principal Investigator |
市野 美夏 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(機構本部施設等), データサイエンス共同利用基盤施設, 特任助教 (40376968)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三上 岳彦 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 客員教授 (10114662)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 気候変動 / 日記天候記録 / 日射量 / 気候復元 / 江戸時代 / 冷夏 / 飢饉 / 農業収量 |
Outline of Annual Research Achievements |
日記天候記録からの日射量推定方法(市野ほか, 2018)の開発については、現在の観測値を用いたパラメータ算出のデータ期間はこれまで5年間であったが、1981年から2010年の30年に拡張した。新たなパラメータを利用し、歴史天候データベースの1820年から1850年の記録をもつ18地点の日射量を推定した。天保飢饉の中で大阪堂島米価が高騰した、1833年、1836年、1838年の夏季において、日射量の月別推移を議論した。その結果、1836年は5月から9月まで、関東、中部、近畿、中国、北九州の広い範囲で日射量の少ない状態が続いていたと考えられる。この結果は前述の3年の中でも異常高騰した1836年の特徴を説明しており、これまでより高い時空間分解能で天候変動の社会への影響を議論することの重要性も示した。さらに夏季以外の天候に影響を受ける大麦などの作物でも分析を進めるための、データを収集、整備を始めた。本成果は、日本地理学会2022年春季大会等で報告した。 昨年度から引き続き、1886年から1912年の日記データの収集およびデジタル化、数値化、1890年から1928年のマイクロフィルムからの気象観測データのデジタル化と整備を進めた。これらのデータを用いて、日記の天候記録と気象庁の天気概況の相違を明らかにするための解析を進めた。日記の記述の評価に加え、重複期間で日記からと日照時間からの日射量推定値を月別に評価することができた。日記は天気概況に比べて、日照率が低い日まで晴れとする傾向がある。また、その補正を行った日記天候記録からの日射量推定値と日照率等を利用し、1720年から2010年の長期日射量の推定を試みた。結果では、5月の推定精度に課題があり、日記の観測地点と気象庁との距離による可能性を検討するため、都心で記録された日記のデータ整備を始めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍で当初予定していた資料収集調査は遅れているが、マイクロフィルムやデジタルアーカイブ、書籍などを利用し、整備可能なデータから進め、推定方法の精度向上と評価が進んでいる。また、他分野との連携も広がり、結果も出てきていることから、総合的にはおおむね順調と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
資料の調査収集については、引き続き、資料が不足している東北および日本海側を重点的に進めていく。推定方法の改善、それによる日射量の推定値およびその精度検証については、成果の公表の準備と、推定値を利用した解析を進める。さらに、農業収量、経済変動、人口変動など、歴史学分野との協働研究などの多分野連携に基づく、18世紀から19世紀に起こったさまざまな気候変動と社会変動の新たな議論のケーススタディとして、天保の飢饉について推定結果を利用し高時空間分解能での分析を試みる。具体的には、これまで進めた夏季の分析に加え、これまでほとんど議論がされていない夏季以外の天候の影響を受ける作物等に注目した解析を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍により、国内外の調査および学会発表ができなかったため、残金が発生した。また、国際誌においては欧州の状況の影響で、査読にも時間がかかっており、掲載料などの支出が増えなかった。コロナによる規制も緩やかとなってきている中、これまであまり進んでいなかったデータ収集と成果のための公表に重点を置き、国内外での調査旅費、学会発表、論文投稿、国際連携などによる旅費とその他の項目での予算使用を計画している。
|
Research Products
(9 results)