2020 Fiscal Year Research-status Report
教学データと心理尺度を用いた将来留年や学習状況悪化に陥る学部学生早期抽出法の確立
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20K02939
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北田 雅 京都大学, 経済学研究科, 講師 (00422949)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 励 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 准教授 (10411836)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 生活充実度 / 友人数 / 最低修業年限 / 卒業 |
Outline of Annual Research Achievements |
文部科学省発表の学校基本調査により、約2割の学部学生が留年するという傾向が40年以上続いていることが判明している。いずれの大学においても、学生定員の適正管理は喫緊に対処すべき問題として認識されている。本研究は心理尺度との関連性を解析することにより、将来留年や単位取得状況の悪化に至る可能性の高い学生を抽出する方法を確立することを目的とする。調査対象学部においては2014年度より入学3ヶ月後の学生生活実態調査を行っている。本研究では学生生活実態調査の属性分析に加え、心理尺度として大学入学時の首尾一貫性Sense of coherence (SOC)を加える。これらを独立変数、最低修業年限内の卒業の可否や各年次終了時の単位取得数という学修状況を従属変数とするロジスティック回帰分析、あるいは重回帰分析等の回帰分析を行い、予測式を得る。学生生活実態調査と学修状況については研究開始時に既に3学年分のデータが揃っているため、別途予測式を立て危険性の高い学生の抽出と介入を行い、介入効果を分析する。 令和2年度は、新型コロナウイルスの影響を受け、新入生のオリエンテーションがやむなく中止となったため、SOC調査を行うことが不可能となってしまった。このため、2014年度より執り行われている学生生活実態調査結果の属性とその後の学業成績、および卒業の可否についての関連性について論文として取りまとめ、投稿を行った。2015年度および2016年度入学者の学生生活実態調査と学修状況の関連性についても、解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査対象学部においては、入学3ヶ月後に学生生活実態調査に関するアンケート調査を行っている。これについて、2014年度の調査結果と、最低修学年数である4年間における卒業の可否について、カイ二乗検定を行い関連性を分析した。また、各学年終了時の取得単位数について、Welchの分散分析、あるいはWelchのt検定を行い、関連性を分析した。その結果、生活充実度が最低修業年限内の卒業の可否と有意に相関性があることや、生活充実度は主に1, 2年次の取得単位数に影響を及ぼすこと、入学後にできた友人数が生活充実度に影響を与える可能性があることを明らかとした(北田, 投稿中)。2015年度および2016年度入学者の学生生活実態調査と学修状況についても、解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
調査対象学部において、新入生を対象としたSOC調査を行う。令和3年度入学生が卒業する令和6年度末に卒業(留年)判定がなされるため、令和6年度末に1学年分の最低修業年限内の卒業の可否・および単位取得状況のデータが得られる。卒業者と留年者の入学時SOC値の平均値の差についてWelchのt検定を行い、卒業者と留年者の入学時SOC値の相違を示す。また、最低修業年限内の卒業の可否を従属変数、SOCの3尺度あるいは把握・処理可能感と有意味感の2尺度を独立変数としたロジスティック回帰分析を行うことにより、入学時SOCが最低修業年限内の卒業の可否(=留年)に与える影響を明らかとする。 新型コロナウイルスの影響により新入生が一堂に会す機会が得られないためサンプルサイズが小さくなる可能性や、適切な調査を行うことが困難となる可能性がある。また、そのため卒業の可否についての検定が困難となる可能性も考えられる。その場合は、研究期間の延長も視野に入れながら、検討を進める。学生生活実態調査についてはサンプルサイズが小さいながらも継続的に執り行うことができているため、コロナ禍の影響についても検討を加える予定としている。
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Causes of Carryover |
令和2年度は、コロナ禍の関係で新入生のオリエンテーションがやむなく中止となり、SOC調査はできなかった。調査旅費も使用することができなかった。そのため、令和3年度より学生生活実態調査に盛り込めるように準備をし、2015年度および2016年度入学者の学生生活実態調査と学修状況について、解析を進めた。
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