2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of a pulatile VAD having a valve mimicking aortic valve
Project/Area Number |
20K12611
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
白井 敦 近畿大学, 工学部, 教授 (20302226)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 振動型ポンプ / LVAD / 逆止弁 / 流体回路 / ポンプ特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は,大動脈弁を模擬した逆止弁の作成方法の検討および振動型ポンプの試験用流体回路の構築を行った. 逆止弁の作成では,まず,軟質樹脂を用いて鋳造法による弁膜の一体形成を試みた.本学所有の3Dプリンタを用いてABS樹脂製の鋳型を作成し,ここにPDMSまたは人肌のゲル(エクシール)を注入して固化させることにより形成を行った.その結果,①3Dプリンタの精度の関係で膜厚を1mm未満にできない,②鋳型から取り出した弁膜が互いに粘着する,③樹脂の粘度が高いために形成時に脱気が困難で気泡が入るという問題があった.そこで,次にディップコーティングによる形成を試みた.上記の樹脂に加えて液体ゴム製塗料を用いた結果,①重力の影響で膜厚を均一にすることが困難,②角部が薄くなりすぎて穴が開く場合があるという問題があった.そのため,熱可塑性ポリウレタンシートまたはシリコーンゴムシートをABS製弁座に接着剤で固定する手法をとった.本手法によって上記の問題が解決された. 次に,試験用流体回路を構築した.過去の研究を参考に構築したシステムでは,ポンプ振動管とリザーバタンクの接続にゴムシートを用いた防振フランジが用いられてきたが,逆止弁を設置しない状態で駆動した場合に,ゴムシートの振動によって圧力変動が計測されるという問題が明らかになった.そのため,フランジ形状を試行錯誤した結果,ゴムチューブの伸縮を用いるフランジを用いることでこの問題を解決した. 最後に,この試験用流体回路を用いて,試作弁と従来のJelly-fish弁による送液効果の比較を行った.その結果,試作弁を用いた場合も,従来のJelly-fish弁と同じメカニズムによって送液されることが示された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は,コロナ禍の影響で研究のスタートが遅くなったことは否めない.その中で,鋳造法およびディップコーティング法による弁膜形成のための鋳型形状の検討に時間がかかったことが大きい.一方で,流体回路の防振フランジによって圧力振動が発生することが明らかになったが,フランジの改良によってこの圧力変動を大幅に手限することが可能になった.これは,申請時の研究計画では1年目後半から2年目に行う予定の研究であり,大きな成果であると考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は,逆止弁の作成方法の更なる検討を行う.樹脂シートを用いた逆止弁は,手作業で組み立てるために弁の工作精度が低いために弁膜が閉じたときの形状が一定にならないという問題に加えて,ポンプ実験において弁座との接着部が剥がれるという問題が発生した.そのため,弁膜形状およびその固定方法について,弁座形状も含めた改良を行う必要がある. また,試作弁の形状による送液効果の比較を行う.現在は予備実験の段階であるが,弁の全長によって吐出流量に変化があるという結果が得られており,これを詳細に計測する予定である.さらに,現在,樹脂材料としてPVA-Hを用いた鋳型法による弁膜の一体形成法の検討を東北大学に依頼している.この弁が完成した場合は,上記の弁との性能比較を行う.
|
Causes of Carryover |
一番の原因として,コロナ禍による学会の中止やオンライン化によって出張旅費の支出が不要になったことが挙げられる.もう一つは,弁膜の一体形成のために購入を検討していた物品(真空乾燥機や真空ポンプ)について,購入前に行った弁膜の作成実験において芳しい結果が得られないことから購入を中止し,その代わりにカッティングマシンを購入したことによる差額が上げられる. 現在使用しているハイスピードビデオカメラシステムのメモリの不具合により,画像にノイズが入るという問題が発生している.本システムはメーカーのサポートが切れており修理が不可能なため,次年度使用額と翌年度分助成金の一部を用いて,新たなハイスピードビデオカメラの購入を検討している.
|