2021 Fiscal Year Research-status Report
消滅の危機に瀕した八重山諸方言の談話資料データベース構築とそれに基づく研究
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20K13051
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
原田 走一郎 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (00796427)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の研究実績としては、1.方言で音声をつけるべき動画素材を得ることができたこと、2.黒島方言の目的語標示に関する論文の発表、3.形容詞の記述的研究が挙げられる。 1. 本研究では、動画に黒島方言で解説をつけ、それを公開し、データベース化する予定である。2021年度もフィールドに行くことができなかったため、現地で活動しているNPO日本ウミガメ協議会附属黒島研究所に協力を依頼し、動画を蓄積してもらった。現在のところ、8本の動画が収録・編集済みである。これに今後、方言で解説をつけていく。また、今後の協力関係についても同研究所と確認を行っている。 2. これまでに収録済みの談話資料データベースを基に、黒島方言における目的語標示に関して研究を行い、論文化した。黒島を除く八重山諸方言においては、目的語は無助詞であることがふつうであるとされることが多い。しかし、今回の談話資料を用いた研究からは黒島方言はそれにあてはまらないことがわかった。具体的には、約25%しか無助詞はなく、残る75%は=baもしくは=juでマークされていることがわかった。また、無助詞の場合は述部と隣接しているものがほとんどであることもわかった。さらに、公開されている石垣島登野城方言の談話資料との対照からも、八重山諸方言内での黒島方言の特異性が明らかになった。このことは、八重山語に隣接する宮古語が徹底的に目的語をマークする点を考慮すると興味深く、今後は主語のマーキングも含めて検討する必要があると考えられる。 3. 黒島方言は1つの語根から2つの形容詞を派生し、一方は比較をあらわす。この比較形容詞の発達の位置づけについて研究を行い、発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症によるところが大きい。まったく現地調査が行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
動画の撮影・編集については今後も黒島研究所の協力をあおぐ。 目的語標示のありかたについて把握できたので、今後主語標示のありかたについても研究を行う予定である。また、それと関係が深いと思われる焦点標示のありかたについても研究を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症のために現地調査に行けなかったことが理由である。 今後も調査が行えるタイミングを見計らって調査を行う予定であるため、その旅費として使用する予定である。また、前年度同様、現地のNPO黒島研究所に動画作成を進めてもらう予定である。
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Research Products
(2 results)