2020 Fiscal Year Research-status Report
ホームヘルパーが利用者から受けているハラスメントの実態と要因に関する研究
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20K13673
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Research Institution | University of Kochi |
Principal Investigator |
辻 真美 高知県立大学, 社会福祉学部, 講師 (00551251)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ホームヘルパー / 利用者から受けるハラスメント / 実態把握 / 発生要因 / 労働環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ホームヘルパー(以下、ヘルパー)が、利用者から受けるハラスメントについての実態を明らかにするとともに、その発生の要因を分析することを目的としている。令和2年度は、介護福祉領域全般を対象にしたハラスメントに関する文献研究を進めていった。研究成果を述べると、次のとおりである。まず、介護従事者が利用者から受けるハラスメントには、利用者側と介護従事者、社会制度や組織体制の3つの側面から多様で複合的な発生要因があることが把握された。そのなかでもヘルパーに特化したハラスメント発生要因については、以下の内容であった。〈 〉は生成したサブカテゴリーを示している。 先ず、利用者側としては、〈対介護従事者に求めようとする上下関係〉や〈介護従事者への歪んだ認識から優位性を誇示しようとする〉といった、利用者との相互関係性によってハラスメントが出現しやすくなっていた。また、〈実践の場が利用者の生活圏域内という特殊な環境〉であることが発生の要因になっており、〈通常をはるかに超えた不衛生な環境や性に関する物品の露出〉がさらけ出された利用者宅に入ることで、ヘルパーはハラスメントを受けてしまうことになる。 一方、介護従事者側では、ヘルパーは、〈ハラスメントを個人の内省化で対処する考え方〉や〈ハラスメントが起こったときに問題視しようとしない〉といった思考過程に移行せざるを得ない状況に置かれることが、発生要因として存在した。 また、社会制度や組織体制においては、訪問介護事業所の〈組織やサービスの規模が小さいこと〉がサポート体制を作る困難性を強め、ハラスメントを発生させることにつながっていた。加えて、ヘルパー業務の特性によって生み出される要因に〈個別ケアの提供による孤独〉があった。密室の空間内で一人業務を遂行すること自体が、ハラスメントの発生要因につながっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度の研究実施計画として、以下の2点を予定していた。 ①ヘルパーのハラスメントの発生要因との比較検討に用いる基礎資料を作成するため、先行文献の整理を行う。②次年度(令和3年)のヘルパー及び管理者、サービス提供責任者に対する半構造化インタビュー調査に使用するインタビューガイドを予備調査によって作成し、調査内容を精査する。 まず、①の進捗状況では、介護福祉領域全般による先行文献を収集し整理していくなかで、ヘルパーのハラスメント発生要因につながるとされる、いくつかの傾向や特徴を見出すための示唆が得られた。現在、比較検討を行うべく先駆的に進められている医療看護分野の先行文献のなかでも、取り分けヘルパーと同じく在宅をフィールドとする訪問看護師の研究に着目し、その知見の整理と分析を進めている。 また、②については、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、第一線で稼働するヘルパーやサービス提供責任者、管理者への負担に考慮した。綿密な情報収集によって予備調査協力を得ることが困難であると把握し、調査は不可能と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度については、現在、継続中である医療分野の訪問看護師が利用者から受けるハラスメントの文献研究の分析を進め、完了させる。その上で、先に介護福祉領域全般から見出されたヘルパーのハラスメント発生要因の特徴や傾向との比較検討を進めていく。 また、インタビューガイド作成に向けての予備調査及び令和3年度の研究実施計画にある訪問介護事業所のヘルパー及びサービス提供責任者、管理者に対するインタビュー調査が実施できるよう、以下の方針で進めていく。新型コロナウイルス感染症の状況を見極め、かつ、現場の情報収集を綿密に行い、感染が落ち着いている間隙に調査協力をお願いし、調査を実施していく。なお、調査研究開始前には、高知県立大学研究倫理審査委員会及び高知県立大学社会福祉学部研究倫理審査委員会に申請し、承諾を得ることとする。
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Causes of Carryover |
令和2年度は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、インタビューガイド作成のための予備調査が全く行えなかった。そのため、予定していた調査時の交通費や人件費の経費について、全く使用できなかったことが理由である。 令和3年度は、新型コロナウイルス感染状況を見極めながら、インタビュー調査を開始する予定である。その調査にあたり、交通費や人件費として使用する。また、調査結果の管理と分析に必要な物品の購入、研究成果発表のための学会誌等の投稿料を計上した。
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Research Products
(2 results)